神との対話

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神との対話

急いで二階の自部屋へと戻るとベットの上でうずくまる。 「一体どうなってんだ…何が起きているんだ…」 しばらく時間が流れる。その後、突然脳内に声が響く。 「君かい、小説家を目指しているのは?」 俺は思わず怯む。何だ今の声は? 「私は全てをつかさどる言ってしまえばこの世界の神だ。君の周りで最近おかしなことが起きているよね。それは全て私の働きなんだ。」 「そんなことありえるか!全部うちの母親がやっていることだ!」 神は答える 「そうだ、正確には君のお母さんから頼まれてやっていることとも言えるな。君のお母さんは実は神とコンタクトが取れるんだ。それで君を苦しめるよう頼まれたんだ。もちろん自死させることを目的にね。」 「あの噂話も、毒も、怪電波も、ストーカー行為も、心を読まれるのもお前が差し向けたのか?どうやってそんなことさせたんだ」 「人々の心を無意識に動かしているのさ。もちろん毒だけは違う。それは君のお母さんの判断だ。」 「どうすればこの状況から戻れる?頼むから戻してくれ!」 「それはできない。君が唯一助かる方法は自死だけだ。それだけ忠告したい」 すると、すっと脳内から神と思しき声が消えた。 「今のは何だったんだ…疲れているのだろうか。今日は図書館へ行かずに家で休もう。」 気づくと目が覚めたらしい。起きて1階のリビングへと向かうと父と母が談笑している。死んだはずの父がなぜいるのか?思わず頭が混乱した。こちらに気づいた父が俺に話しかけてくる。 「お前小説家目指して毎日図書館で勉強しているそうじゃないか。頑張れよ。お母さんから聞いたぞ。」 「ああ、そうだけど…」 「でもな、お前は今までの人生で頑張ってきたことなんかないだろう。それが、本気で頑張ってることが本当に誇らしいよ。でもな無理のしすぎは良くない。顔色も悪いぞ。じゃあな」 俺は満面の笑みで答える。「俺、本気で頑張るから」 気づくとベッドの上だった。 「はっ、夢か…」 窓を見るともう真っ暗だ。1階から悪魔の呼ぶ声が聴こえてくる。 「ちょっと降りてきてー」 ここで無視する手もあったが、ヘタしたら殺されかねない。下に降りるのが最適解だろう。恐る恐るリビングへと向かうと悪魔が一枚の紙を持ってテーブルに座っている。 「なんだよいきなり。どうしたの?」 「あんた最近顔色も悪いしご飯も全然食べないじゃない。それになんか挙動不審だしね。もしかしたら精神的な病気なんじゃないかと思って今日近所の精神科病院に行ってきたのよ。それで先生も明日朝一で来なさいってことになったから行くわよ。」 「冗談じゃない!俺は至って正常だ!おかしいのはそっちだろ!」 悪魔は諭すように語る。 「まあまあそう言わずにね、お父さんも亡くなって精神的にも正直来ているんじゃないのかしら。とりあえず行くだけ行ってみましょ。それにあんた小説家になりたいんでしょ。これもいい体験よ」 俺は確かに、これは何かの材料になるかもしれないと思った。 「分かったよ。明日9時ね。」 それだけ告げると自部屋へと戻っていった。睡眠導入剤を飲むとベットで入り、気づくと眠りについていた。 翌朝になり、毒入り朝食には一切手を付けずに悪魔と一緒に近所の精神科病院へと、向かった。受付を済ませ、問診票を書かされるんだがここで何を書くか迷う。 「とりあえず体がビリビリして睡眠導入剤を貰っていることだけ書くか」 30分程待つと診察室に呼ばれる。 悪魔と一緒に診察室へと入る。老練そうな先生は問診票を読むと、尋ねる。 「お母様は昨日電話で自分の作った食事に一切手を付けずに外で買ってきたものを食べたり挙動不審だとおっしゃってましたね。君はどうして食べないのかな?」 俺はここで正直に言うか迷う。しばらくの沈黙が続いた。すると先生は口を開いた。 「お母様、少し席を外してもらってもいいですか?」 悪魔は診察の外へと出ていった。 俺は正直に今まであったことを全て語った。 どうせ殺されるんだ。先生にだけでも全てを語ってしまおうと思ったからだ。 すると、先生は悪魔を呼び戻した。先生はそのまま語りかける。 「お母様の息子さんは統合失調症です。おそらくお父様が亡くなったことがきっかけだと思います。」 その後も先生は俺が語った内容を全てこの悪魔に話してしまった。 俺は終わったと思った。もういいさ、どうにでもなればいいと自暴自棄な心境になった。 「君は統合失調症の症状が出ているんだ。それも正直かなりひどい状況だ。君が同意するなら今ベッドに空きがあるから今日にでも入院できるけどどうする?」 俺は即答する。 「嫌です!」 「そうですか…それならお母様の同意があるなら医療保護入院という制度があり、入院させられますがどうなされますか?」 悪魔はうつ向きながら答える。 「先生是非お願いします。息子を昔みたいに戻してください。」 頭が真っ白になった。その後のことはあまり記憶にない。 気づくと、閉鎖病棟の保護室と呼ばれるところのベッドにいた。 この日から俺の閉鎖病棟での入院生活が始まった。
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