路線達の物語─机を囲んで

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「東横さん、ちょっとこっち来てください」 「え?なんだ?」 「いいからいいから」 世田谷は私を無理矢理引っ張っていく。 連れていかれたのは、会議室。 何だ?私何かしたっけ。 ⋯⋯そうか。今日は私の誕生日。つまり、そういうことか。 それならこんな大きな会場用意しなくてもいいのになと思いながらドアを開けた。 すると。 「東横!ハッピーバースデー!もう少しで100歳!」 クラッカーの音と大井町の声が部屋に響いた。 しかし。 「え⋯⋯」 なんか多い。ビックリしながら辺りを見回す。 思いもよらない光景が拡がっていた。 「嘘だろ⋯⋯え、なんでお前らまで」 「暇だったのよ」 「俺らだけ来ないのもアレだし」 小田原と江ノ島に井の頭。京浜に逗子に大師。 玉川たちに、相模原もいる。 「えー⋯⋯えっ、そのケーキとかどうしたの」 私の顔がデフォルメされて描かれたケーキが机に置いてある。頭に私の大好きなマスコットを乗せている。 かわいい。すごい。 どこかで頼んで作ってもらったのだろうか。 目を輝かせていると、 「食べる時に切り刻むと考えたら気持ちが乗ってしまった」 食器を運んできたのは、京王。 その後ろから、京王の倍の食器を持った高尾も歩いてくる。 よく見ると京王が持っているのは全てプラスチック製だ。この季節はいつも体調か悪いから、落としてもまだ救いようのあるものを⋯⋯恐らく高尾が押し付けたのだろう。 「このケーキ、お前が作ったのか?」 「⋯⋯不満か」 「いや、全然⋯⋯お前凄いな」 ほとんど無意識に漏れた言葉だった。 「⋯⋯」 何だかムスッとしながら食器を並べ出す。 世田谷の方を見ると、苦笑いをされた。 「姉さん、最近体調良さそうなんだよね」 高尾がニコニコしながら言う。 「よし、それじゃあさっきフライングしちゃったけど、今度はちゃんと席に着いてやろっか」 「あ、東横さんこっちです」 目に見えてはしゃぐ大井町に促され、みんなは席に座る。 「⋯⋯お前もよく参加したな」 「いえ、⋯⋯一応会議室を貸したので、見ておかないとでしたから」 「そうか」 ちゃっかり混じっていた目黒も、なんだかんだ準備をしてくれていたらしい。 監視役、そういうことにしておこう。 多摩川は井の頭や田園都市、池上と混じって話している。何だかホッとした。 「えーこほん、この度は私が京王さんがポロッとこぼした『みんなで集まって祝ってやれば喜ぶんじゃないか』発言に基づきました誕生会に」 「なっ、バラさ、あれは本当に何も考えないで」 「はいはい黙るー」 「おだわっ、むぐ!」 「えへへ。とにかく、集まってくれてありがとうございます!え、えっと、主役の我らが東横に拍手!」 「落ち着け大井町!」 でもみんな拍手はしてくれた。 あったかい。 「もういいや!東横!お誕生日おめでとう!てなわけで拍手!」 「どんだけ手を叩くんだよ」 でもしてくれた。 あったかい。 と、そんな具合で緩く始まったパーティ。 お菓子美味しい。 「不思議ですね」 「ん?」 「まさか、このメンバーで同じテーブルに着くとは」 「⋯⋯そうだな。会議でさえ揃ったことなかったよ」 もはや誕生日パーティというよりかはわちゃわちゃ会に近いが、嬉しいものは嬉しかった。 「あったかいなぁ」 にひひ、と、ついついニヤケてしまう。
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