感情の重さ

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麗花は小さい頃から様々な大人を見てきた。身体が弱かった麗花だが、祖父は秋草家の一切を取り仕切る秋草雄一郎であるから、静かな料亭に足を運び大人に囲まれて食事をすることもしばしばあった。そんな中で磨いた「人の本質を見抜く力」。小さな仕草、言葉、声音。全てを観察してその人の心情を推し量ることが出来る能力。それ故に、麗花の発する言葉は、時々周りの大人を怖がらせた。茂子は麗花を怖がりはしないが、麗花の発言は意味深なものが多く、真意を測りかねることが多い。 「…あの、お嬢様、申し訳ありません。茂子にはお嬢様のおっしゃることの意味が掴めません」 「あら、いいのよ。これは利史様と私だけの秘密だわ…ふふ」 大らかに、ただ優雅に。このような状態でも笑っていられる自分は、短い間に随分とまた精神が老けたようだ。自嘲の笑みが表情に滲むのを感じる。
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