感情の重さ

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「茂子、安心して頂戴。あの方ならきっと私の言うことを理解してくださるはずだわ…理解してくださらなくても、頑張って伝え続ければいいのだもの」 震える指先で窓ガラスをなぞる。冷たい感触が指先に伝う感触にゾクリとした快感が滲む。 「お嬢様…どうか、ご無理だけはなさらないでくださいませ」 茂子の不安が滲む声音に微笑み返すことしか出来ない。別に、麗花が無理をするわけではないのだ。ただ、利史の感情が向かう先を与えてその方向が正しいのだと言葉で伝えること、そして安心するように伝えることしか自分にはできない。 「そろそろ、お帰りになる頃かしら」 「そう、でございますね…お茶などお淹れ致しますが、どう致しましょうか」 「利史様がお帰りになった時でいいわ」 「かしこまりました。何かありましたら直ぐにお呼びになってくださいませ」 茂子は不安を表情に映しながら、麗花を一瞥して部屋を出て行った。次に部屋の扉が開くのはきっと利史が帰って来た時だろう。
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