感情の重さ

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麗花は部屋中に置かれた花瓶とそこに活けられた薔薇を見やった。赤、ピンク、白の薔薇はどれも美しいが、茂子の言うように部屋に充満する香りはまるで毒のように人の心を犯していく。麗花の精神もそろそろ限界が近づいてきている。本当は、利史が先に限界を迎えるかと思ったが、利史はその気配を全くみせない。ならばもう、残る術はただ一つ。自分が動かすしかないのだ。白い爪先がほのかに赤く染まるほど強く拳を握る。左手の薬指に嵌められた指輪が窓から差し込む光を反射して煌めいた。 (どうか…私達を繋いでいて) 切なる願いを込めて、麗花は額を柔らかな光彩を放つ指輪に押し付けた。伝えたいことを伝えるために。
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