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「…おかえりなさいませ、利史様」 「ああ…?どうかしたのか」 利史が帰って来たのは麗花が決意を固めて一時間が経った頃だった。顔に緊張が滲んでいたのか、利史は直ぐに気づいて顔を歪ませる。こちらに腕が伸びてきて、そのまま両肩を掴まれ顔を覗きこまれた。 「何か、あったのか」 「……っ」 「どうした、何故答えない」 息が詰まった。利史は随分とやつれている。この状況は、利史が望んで叶った状況であるはずなのに、本心ではこうなることを望んでいないような。人の脆さは闇と同じで、きっと自分自身を覆い隠してしまうものなのだろう。利史は自分自身をも無意識に見失っているのだ。
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