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一台の車のライトに、目が射抜かれた。バンに何か乗っている。
ひと…
人型のシルエットが車の上に立っている。
状況が理解できないままにみつめる。その人影は大きく動き、危なげも無くフロントをけって、
飛んできた。
「え?」
思わず声が漏れる。
細い身体がうねり、なめらかに空を裂く。
野生の獣みたいだ。
ザワッと人ごみが動く。髪の先を生き物のように揺らがせて、あっけにとられた大男の前にそいつはトンと着地した。
そして、大男の耳に顔を近づけ……何か言った、ように見えた。
瞬間、背筋がなぜかひやりとする。大男の身体が、僕の視界で、まるでそこだけスローモーションになったかのように、ゆっくりと沈んでいった。
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