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エピローグ
「犬、いつから飼ってるの?」
「ローマでね。美桜が日本に帰ってから割とすぐに、同僚の家で仔犬が産まれて引き取り手を探してたからそのうちの一匹を貰ったんだ。」
流木のベンチに並んで腰を下ろして、私たちは語り合った。
とりとめもない話をする。
ただそれだけで、幸せ過ぎて昇天しそうになっていることを、惣太郎には悟られないように平静を装った。
「そっかぁ。チェリーはローマ生まれなんだぁ。」
「チェリーって名前…どう思う?」
「名前?可愛い名前だね。惣太郎が付けたの?」
「…美桜の名前から取ったんだ。」
「え?私の?」
「美桜の桜って字から取って、チェリー・ブロッサム…それがコイツの本名なんだ。」
照れ臭そうにチェリーを撫でながら惣太郎が言った。
離れていても、どこかで繋がっている。
そう思っていたかった。
惣太郎は海を見ながらそう言った。
「チェリーの名前を呼ぶ度にさ。美桜のことが頭に浮かぶんだ。バンクーバーに来て、よくこのビーチを散歩してて。横に美桜がいたらいいのにって、何度も思った。この綺麗なサンセットを一緒に見れたらって。」
惣太郎の顔が、夕日に染まって輝いて見える。
その横顔が、愛しくて愛しくてたまらない。
この先の人生を
この人とずっと一緒に生きていく
明日も明後日も
来年も再来年も
10年後も20年後も
ずっとずっと
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