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それから数ヶ月後。 私は大きな荷物を抱えて、成田空港にいた。 目の前には、心配そうな顔をして私を見つめる、真由さんの姿。 「ああー、もう、やっぱり心配だなー!ねえ、やっぱり私も一緒に行こうか!?」 「ふふ。真由さん、大丈夫ですって。真菜ちゃんや崇裕くんがいるんだから無理でしょ。」 「そうだけど…でも美桜ちゃん本当に大丈夫なの?惣太郎くんには結局連絡してないんだよね?」 「…はい。」 「なんで連絡しないの?ああ!サプラ〜イズ!的な!?来ちゃった。てへ。的な!?」 「あはは。それもちょっとあるけど。」 今から私はカナダへ行く。 あの日、平岡さんと別れてからすぐに、私は真由さんに連絡をした。 最初真由さんは私が誰だか分からなかった。 私が名を名乗ると、急に真由さんの声が聞こえなくなった。 しばらく沈黙した後、真由さんの啜り泣く声が電話の向こうから聞こえてきた。 『本当に…?本当に美桜ちゃんなの?』 信じられないという声で、私の名前を呼ぶ。 その震える真由さんの声が、どれだけ私のことを思ってくれていたのかを思い知らされて、その気持ちを踏みにじっていた自分を心から悔やんだ。 たった今平岡さんと再会して話をしたことを報告して、すぐに会う約束をした。 平岡さん一家は、日本に戻ってきてからは平岡さんの実家に住んでいる。 二人目の子供は崇裕くんという男の子で、もうすぐ1歳になる。 数日後には平岡家にお邪魔して、崇裕くんと初対面を果たし、真菜ちゃんとも、そしてもちろん真由さんとも再会を果たした。 何年も会ってなかったし、言ってみればローマでだってほんの数回しか会っていないのに、私たちはまるで10年来の親友かのごとく話が弾み、私の今までの心にかかったモヤを綺麗に払ってくれた気がした。 真由さんと平岡さんと話しているうちに、なんだかこのまま自然に惣太郎に会いに行けるような気さえしてきた。  そして今、私は真由さんに見送られてカナダへと発とうとしている。 「サプライズ的な気持ちもあるけど…やっぱり私、怖いのかも。」 「怖い?何が?」 「惣太郎は、本当に今でも私を思っててくれてるのかな…。惣太郎を裏切った私を、許してくれてるのかな。私のことなんて、とっくに忘れてるかもしれない。カナダで運命的な出会いがあって、向こうで誰かと幸せに暮らしてるかもしれない。そう思ったら、怖くて連絡ができなかったんです。」 「んー、惣太郎君に限ってそんなことないと思うけど…あんなに美桜ちゃんのこと大切に思ってたのに。美桜ちゃんが日本に帰ってからも、ずーっと美桜ちゃんのことだけを思って過ごしてた惣太郎君を私達は見てるからね。きっと大丈夫。私が保証する!」 「真由さんにそう言われると、本当に大丈夫な気がしてきた。」 「でしょ〜?」 私達は顔を合わせて笑い合った。 真由さんの横でニコニコしながら私を見上げる二人の子供に目を移し 「真菜ちゃん、崇裕くん、見送りに来てくれてありがとう。お土産買ってくるからね。」 「美桜お姉ちゃん、カナダに住むんじゃないの?惣太郎お兄ちゃんと結婚するんでしょ?」 真菜ちゃんが澄んだ瞳でそう言う。 「アハ。結婚かぁ。できるといいけどね。まだ分からないよ。惣太郎お兄ちゃんと会えるかどうかもまだ分からないし。」 「会えるよ!だって惣太郎お兄ちゃんは美桜お姉ちゃんが大好きなんだよ。前にローマで惣太郎お兄ちゃんが教えてくれたの。いつか美桜お姉ちゃんと惣太郎お兄ちゃんは結婚するんだよ。それはもう運命っていうので決まってるんだよって。だから絶対惣太郎お兄ちゃんと会えるよ!」 純粋な子供に言われると、本当にそれが叶う気がしてしまう。 私は思わず泣きそうになって、涙がバレないように真菜ちゃんを抱き締めた。 「ありがとう、真菜ちゃん。」 「惣太郎お兄ちゃんに伝えて。また一緒にトランプやろって。」 「うん、分かった。伝えておくね。」 こうして、真由さんと二人の子供に見送られ、私は旅立った。 惣太郎の元へと…
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