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日本から約9時間のフライト。
飛行機の中では、またほとんど眠れなかった。
ローマから日本に帰ってきたときと同じ。
あの時は、咲也のことが心配で一睡もできなかった。
でも今回は、惣太郎に会えるという喜びと、惣太郎が私と会うことを嬉しく思ってくれるのか分からないという不安と、初めて行く国でちゃんと惣太郎の元にたどり着けるかという心配もあって、様々な感情がに入り混じって、心の中はグチャグチャだった。
ソワソワと落ち着かず、何度も席を立ってはトイレへと足を運ぶ。
幸い通路側の席だったから隣の人にいちいち避けてもらうことはなかったからよかったけど、さすがに挙動不審に見えたのかCAさんに
「お客様、どこかご気分でもお悪いのですか?」
と声をかけられ、愛想笑いで誤魔化した。
そんな私を乗せた飛行機がバンクーバー国際空港に降り立ったのは、カナダ時間で午前11時。
日本とは16時間の時差がある。
季節は10月。
バンクーバーは東京より若干平均気温は低いけどそれほどの差はなく、この時期になると日本と同じく紅葉が賑わうらしい。
空港からスカイトレインに乗ってダウンタウンまで移動する。
ウォーターフロント駅に着いてすぐ、駅から程近いホテルに向かいチェックインした。
通された部屋は12階。
部屋に入って、荷物を置いて、カーテンを開けて窓の外を眺める。
バンクーバーのダウンタウンの街並みが一望に見渡せた。
その景色を見て、自分がやっとバンクーバーまで来たのだという実感が湧いてきた。
バンクーバーの空港に着いてからずっと緊張していたから、一息つく間もなくここまで来てしまったのだ。
改めて、自分がバンクーバーに降り立った事実を頭に染み込ませる。
この街のどこかに、惣太郎はいるんだ。
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