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もうすぐ式が始まる時間。
「じゃあ、私たち先に行ってるね。」
香織たちが部屋を出ていこうと扉に向かおうとしたその時。
扉の向こうがガヤガヤと騒がしくなった。
「どうしたんだろう?」
香織が不思議そうにドアを開けて廊下を覗こうとしたその瞬間。
香織を押し退けて1人の女の人が入ってきた。
そしてその人を追いかけてきたのか、焦った顔の咲也も一緒に飛び込んできた。
「咲也?どうしたの?その人、誰?」
私が問いかけると、咲也は困った表情を浮かべた。
「あ、いや、これは、あの…。」
明らかに様子がおかしい。
その女性は、私を睨み付けていた。
そんな2人の様子を見て、私はなんとなくこの状況を察してしまった。
こういうことを想定していなかったわけじゃなかった。
咲也と関係のあった女が式に押し掛けてくるかもねなんて、冗談半分で友達と笑ったこともあった。
まさか本当にそうなるとは…。
「な、なあ、。頼むから、また今度ゆっくり話し合おう?今日のところはさ、もういいだろ?」
咲也が女に声をかける。
女は振り返り、今度は咲也を睨み付けた。
「なにがいいの?いいわけないでしょ?今日は結婚式だからダメなの?バカじゃない?結婚式だからわざわざ今日ここに来たに決まってるじゃない。そんな簡単に結婚なんてさせてたまるもんですか。」
咲也にそう言い放って、また私のほうに向き直った。
「彼女さん。まだ入籍してないんでしょ?ならまだ間に合うわよ。こんな男なんかと結婚しないほうがいいわよ。あなた、絶対不幸になるから。」
それは、咲也と婚約してから周りの友達に散々言われてきたことだ。
私がなにも言わず黙っていると、イライラした様子で女は続けた。
「私がなんでわざわざ今日を選んであなたに会いにきたか、教えてあげる。」
「やめろ!」
女性の肩を掴み怒鳴る咲也。
そんな咲也の手を振りほどき、女はこう叫んだ。
「あたし、咲也の子供を身籠ってるの。」
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