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咲也のマンションの前で足が止まる。
外から部屋の窓を見ると、電気が付いている。
咲也、いるんだ。
マンションの中へと入り、エレベーターで3階へあがる。
咲也の部屋の前まできて、急に足がすくみだした。
合鍵は持ってる。
でもこの鍵を使ってこの部屋に入ったのは、もう何ヵ月前だろう。
ここ何ヵ月かは大体私の部屋に来るか、デートしてもお互いの部屋に泊まることもなくそれぞれの部屋に帰ったりしていた。
なんとなく、咲也の部屋に行くのが怖かった。
今も足がすくんでいる。
この扉を開けたら、もしかしたら咲也は一人じゃないかもしれない。
いやまさか。
でも…。
心の中で何度も一人でそんなやり取りをして、数分が過ぎてしまった。
やっぱり帰ろうかと怖じ気づいた気持ちを奮い立たせ、思いきって鍵を鍵穴に差し込んだ。
そーっと玄関の扉を開ける。
すぐに玄関の靴を確認する。
とりあえずは女物の靴はなさそう。
少しホッとして、中に足を踏み入れた。
リビングに通じるドアの向こうから、テレビの音が聞こえる。
「咲也?」
恐る恐る声を掛けてみる。
返事はない。
靴を脱いで上がり込んだ。
扉を開けてリビングに入る。
この部屋に入るのは久しぶりだけど、何一つ変わっていない、見慣れた部屋の光景だった。
部屋の中を見渡すと、ソファーでうたた寝をしている咲也を見付けた。
テーブルにはビールの空き缶が転がっている。
ソファーの前に座って咲也の顔を覗き込んだ。
意外と長いまつげと、少し薄い唇。
咲也の顔のパーツで、私が好きなところ。
寝顔を見るのが大好きだった。
寝顔を見ていると大好きな気持ちが抑えきれなくなって、寝ている咲也に何度キスをしただろう。
今でも、好きな気持ちは消えてはいない。
でももう、そばにいるのがしんどい。
どうすればいいんだろう。
私はいったい、どうしたいんだろう。
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