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プロローグ
「はぁ……着いた……。」
フィウミチーノ空港の玄関を一歩出て、思わずため息を漏らした。
成田を発ってからトランジットを含めて約21時間、初めての飛行機に緊張してほとんど眠れなかった。
離陸したのは夜だったからその21時間後なら夕方の時刻の感覚なのに、到着したローマの地では日が高く眩しいほどの太陽が照りつけていた。
少しの眠気と、ズッシリと重く感じる体の疲れ。
そして、生きている間にどうしても来てみたかった憧れのローマの地に足を踏み入れたことへの感動で、もう一度大きくため息をついた。
本当に来たんだ。
たった一人で。
海外旅行すら初めてなのに、本当に一人でここまで来てしまった。
期待と不安で胸が張り裂けそうだった。
二度のため息でこぼれ出た私の中の空気をもう一度取り戻すかのごとく、今度は大きく息を吸い込んだ。
それと同時に、よく晴れた空を見上げる。
ここは日本から遠く離れたイタリアのはずなのに、それはまるで日本で見たそれと同じ色をしていた。
透き通るような、白に近い水色。
少しの雲と、眩しく輝く太陽。
空はどこまでも繋がっているんだと、どこかで聞いたようなフレーズが頭に浮かんできた。
そして、あの日の記憶が強烈に甦ってくる。
2か月前のあの日の。
人生で一番最悪な、あの日の記憶……
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