遠い手紙

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彼が失踪したのは、五年前のこと。 あまりにも突然の事だった。 失踪する素振りすら見せていなかったのに、まるで霧のように。 親御さんから連絡が入った時は信じられなかった。 何かの間違いだと、そう信じられたらどんなによかったか。 警察に捜索願を出して一年が経過しても、手がかりの一つすら見つからず。 私は、警察が仕事をしていないだけなんじゃないかと思い、自分で探し始めた。 それでも見つからない。 彼のことを考え、行きそうな所は全てまわった。 三年も探し続けたのに、見つからない。 流石に諦めざるを得なかった。 好きならもっと探すだろと言うかもしれないが、実際それに直面した時、何も見つからないことに無力さを感じる。 それから更に二年が経過した頃のことだった。 家に一通の手紙が届いたのだ。 差出人の名前を見て、ぎょっとした。 彼の名前だったから。 子供がプレゼントに喜ぶぐらいの勢いで、封筒を開けると、中には手紙と何やら綺麗な石が入っていた。 手紙に目を通してみると、彼は生きているようだ。 でも、内容に驚かされた。 だって、異世界にいるとか書いてあるから。 丁寧に手紙の送り方まで書いてある。 どうやら、封筒に入っていた綺麗な石と一緒にポストに入れれば異世界に届くと言うの。 半信半疑だったけど、それがもし本当なら、やらないてはない。 返事の手紙を書いて送ってから、約二ヶ月が経過した頃。 また手紙が届いた。 どうやら、話は本当だったようだ。 手紙が届くのには時間がかかるらしい。 その事がわかってたから、彼との超遠距離なやりとりが始まった。 手が届かないほど、遠くにいるけど。 こうして手紙が送りあえるだけでも、すごく嬉しかった。 彼がこちらの世界に戻ってきた時は……思いを伝えよう。
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