異変

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異変

********  肝試しの翌日は6人揃って警察署に呼び出されて、詳しい事情聴取が行われた。 交番に届け出る前に、前もって6人で考えて考えぬいた末に思い付いた大人たちへの言い訳は、島へ行った目的は男女6人でアウトドアを楽しむためで、廃屋に入ってしまったのは夢中になって遊び過ぎて、辺りが暗くなって遅くなってしまったのでどこか泊まれそうな場所を探していたということにしようということだった。 「どうだった? 大丈夫そうかな?」 「多分信じてくれたんじゃないかな?」 「泉がいてくれて助かったよね。泉の言うことなら、大人は絶対信じてくれそうだもん」  事情聴取を終えて無罪放免となった6人は、喫茶店に入って久美と紗由理が泉が同行していたことに感謝して、胸を撫で下ろしていた。 「まぁ、肝試しもあんな感じで出来なかったようなものだし、満更嘘をついてるわけでもないから良いんじゃね?」 「そうだな! オレもそう思ったから、別に罪悪感とか感じなかったな」 「だよね~♪」 男たちも、特に悪びれるわけでもなくケラケラと明るく笑いながら、昨日のことを何でもなかったかのように話していた。 ********  ただ……泉だけは違うようだった。5人が楽しそうに話している中で、泉だけが浮かない表情をして下を向いて黙り混んでいた。 「ちょっと~! どうしちゃったの泉~? さっきからずっと黙ったままだよ」 「何かあったのか?」  紗由理と雷太に顔を覗き込まれた泉は、顔をひきつらせて身体を一瞬後ろへのけ反らせていた。 「な、何でもないよ! 少し、疲れてるだけだから……大丈夫……何でもない」 「それなら良いんだけど……」 しかし、何でもないと言った泉の視線の先にいる雷太のすぐ後ろに、気味の悪い老婆の姿が泉の瞳にはっきりと映し出されていた。 (どうして? どうして……私にだけあれが見えるんだろう?)  泉は老婆と目を合わさないように、その後も出来るだけ下を向いて雷太を見ないようにしていた。 ********  それから3日後のことだった……。紗由理から泉に朝早くメールが届いて、その内容が雷太が交通事故にあって怪我をして入院したということだった。 (大変だ! やっぱりあの老婆は、良くないものだったんだわ……どうしよう)  雷太の入院を知らされた泉は、家にじっとしていられなくなって紗由理の家に向かった。  紗由理の家に着いた泉は、インターホンを押さずに玄関ドアをドンドンと力一杯叩いて紗由理の名前を叫んでいた。 「どうしたの? そんなに急いで何かあった?」 「ら、雷太のことなんだけど……ハァハァ……」 息を整えながら泉は、紗由理にすがるようにこれまでのことを話し始めた。 「島から帰ってからすぐなんだ……ら、雷太のすぐ後ろに気味の悪いお婆さんがずっと見えて……」 「あ……やっぱりそうだったんだ。泉にも見えてたんだね……」 「えっ!? もしかして、紗由理にも見えてたの?」 「私にだけじゃないよ! 皆が見てる」  意を決して泉があの気味の悪い老婆の話を紗由理にすると、意外なことにその老婆の姿は皆にも見えていたのだと紗由理から知らされて、泉は驚いて言葉も出なかった。  詳しい話は久美たちと合流してからにしようと泉は紗由理に言われて、そのまま2人で病院へ向かった。 病院に着くと待合のロビーで久美と原西がすでに来て泉たちを待っていた。 「じゃあ、やっぱり泉にもあの気味の悪いお婆さんが見えてたんだね?」 「うん! こっちに戻ってからは、ずっと雷太の後ろにべったり見えてた……」 「どうして雷太なんだろう?」 「そりゃね。あんな風に面白半分で布団をめくり上げちゃったしね……それに、雷太だけでしょ? 遺体に手を合わせなかったの……」  久美はあの干からびたミイラの遺体を見つけた時のことを思い返して、大きなため息をついて苦笑していた。 「ほんとだね。他の皆は手を合わせていたのに……雷太だけは、馬鹿馬鹿しいって手を合わせなかったんだよね」 「それで? 雷太の怪我の具合は?」 「それがまだ……良くわからないんだ!」  泉が一番気になっていた雷太の怪我のことを原西に訊ねると、原西も困り顔で言葉を詰まらせてしまっていた。
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