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ようやく彼女の下にたどり着けたのは、それから一年後の文化祭で彼女がライブをやるという噂をきいた時だった。
本当に長い道のりだった。
だいぶ前からゲットしていたライブチケットを握り締めて、体育館に入ったときの緊張は忘れられない。
姫凛さん以外にも何人かのバンドグループも歌うようなライブで、私にはちょっと耳障りぐらいだったがそこも我慢して目的のお姫様を待つ。
そして、彼女の番が来たとき会場の空気はそれまでの盛り上がりとは違い少し冷ややかなものに変わった。
やはり、うわさ通り妬む人間が多いのだろうか。
舞台の上に上がった実際の彼女は小柄で色白なのは正解だったのだが、明るいピンクベージュ系の髪でくるくるふわふわしたショートの可愛らしい天使のような女の子だった。
妄想の中の彼女とは全然違う
けれど、想像以上に素敵な彼女がギターを弾きながら一人歌った姿は声と同じく素敵で会場の空気など気にならないほど私は見とれていた。
彼女が歌い終わったのが、分からなかったほどしばらく夢心地でいたのだが次の曲が始まって現実に引き戻されると慌てて体育館を飛び出した。
彼女を追いかけて、今度こそちゃんと話しかけないと。
私は焦って、体育館の出口から出ると彼女の後姿を探した。
ギターを担いで、ちょうど出てきたばかりの彼女を見つけると
「姫凛さん!!」
と、叫ぶように彼女を呼んでいた。
その声を聞いた姫凛さんはふとこちらを振り返った。
何を話せばいいのか分からない。
と、言うより何も考えてはいなかった。
とにかく、彼女と仲良くなりたい。話がしたい。その一心で呼び止めてしまったのだ。
私はまごつきながらも、とにかく何かを言わないと思い口から飛び出した言葉は
「姫凛さん!あなたの声が好きです!仲良くしてください!!」
などという気持ちだけが先走った告白のようなものだった。
一瞬、彼女は戸惑ったようだったが天使のような顔をほころばせて笑った。
「えっと……熱烈なラブコールありがとー。私のファン一号になるのかな」
などと、照れながら答えてくれたのだった。
「ところで、あなたの名前も教えてもらっていいかな?仲良くなるには、まずお名前から、ね」
彼女にそう言われて、私は名乗ってすらいなかったことに気づき顔を真っ赤にしたのだった。
「つ、筒島です。筒島 梢です……。」
「あはは。なんかかわいいね。タコさんみたい。よろしくね。筒島さん。」
そんな私の様子にコロコロと笑って彼女は手を差し出したのだった。
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