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天使に恋した男の話
ダリオ・エステベスは、風変わりな少年だった。
何よりも天使が好きなのだ。
他の子供達よりも少し遅かったけれど、ダリオは言葉を発し始めると、すぐに天使の話を母に語って聞かせた。
「僕は、ほんの少し前まで天使と一緒にいたんだよ」
ダリオの母、マリアは、この子は他の子供達とは違う、きっと神様から特別な加護を受けた子供に違いないと思った。
ダリオは、天使の話をする以外は、ごく普通の子供だった。
歌が好きで、元気に外を駆け回る、わんぱくな少年だった。
艷やかな褐色の肌に、澄んだ深い翡翠色の瞳。
丸くて健康そうな頬には、笑うとぽっこりと深い笑窪が出来るのだ。
その面差しは、ダリオの父アベラルドに生き写し、なにより天使そのものだ、とマリアは思った。
ダリオの父、アベラルドは、長く続く北方地域の戦線に駆り出されて、三年近く戻らない。
最初の頃は毎週届いていた便りも、次第に遅れがちになり、一年前からは、ふっつりと途絶えて届かなくなった。
マリアは、バスで郊外にあるサンダル工場に働きに出て、ダリオとの生活を細々と支えた。
そんな母を助けるようにダリオは、貧しい生活をものともせず、すくすくと育った。
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