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「僕は学校を出たら、お金をたくさん貯めて天使に会いに行くんだ」
ダリオは学校に通い始めても、やはり天使が好きな少年だった。
ダリオがそう言う時、マリアは彼の頭を撫でながら、決まってこう言うのだった。
「そうねダリオ、早く大人になってちょうだい」
「早く大人になって、ママに楽をさせてちょうだい」
ある時、マリアが勤めていた工場が折からの不況で閉鎖されることになった。
それからのマリアは毎日のパン代すら事欠く辛い生活の中に身を置かねばならなくなった。
僅かな繕い物の内職稼ぎでは、家賃を払うのが精一杯だった。
下宿の大家のドナト・バルビエリは、金払いに煩い太った中年男で、家賃の払いが一日でも遅れると、明日にも出て行って貰う、とマリアを追い立てた。
「ダリオ、今日はパンは買えなかったわ」
マリアが、井戸から汲んできた水の入った水差しを食卓に置くと、ダリオは明るく笑って答えた。
「ママ、僕なら大丈夫だよ。天使のことを考えていたら、パンのことなんてすっかり忘れていたよ」
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