No.65『ボスとテロとパンツと自爆』

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No.65『ボスとテロとパンツと自爆』

佐原「ボス、時代はテロです!」 根岸「いやなんだ、いきなりなんだ。急に過激なことを言い出したな」 佐原「特に思想とかなんにもないけど、とりあえず時代はテロなのです!」 根岸「いや、せめて思想とか、大義とか、そういうのは持とうよ」 佐原「テロする側の流儀というやつですねボス! さすがボス!」 根岸「えーと……」 佐原「というわけで、テロですよボス! 何かに反逆しましょう!」 根岸「いや、うん、そもそもね、私たちはそういう組織じゃないからね?」 佐原「しかしボス! 私らは―――!」 根岸「うん、刑事だね」 佐原「……」 根岸「警察組織なんだよ」 佐原「というわけで、時代はテロです! ボス!」 根岸「話聞いてないねキミ。あとそのボスってのいい加減やめなさい」 佐原「刑事のボスといえばボスでしょう! ね、ボス!」 根岸「その呼び方についてはまあ、今更なんだけどね。キミこの部署に来たときからずっとその呼び方してるでしょう」 佐原「ボスはボスと呼ぶことに決めているのです! ボス!」 根岸「はぁ……」 佐原「というわけで、時代はテロですよテロ! ボス!」 根岸「警察組織がね、テロとかするのはね、よろしくないでしょう?」 佐原「テロボス!」 根岸「なんだその単語」 佐原「武器も既に調達しております! いつでもテロれますよ!」 根岸「無駄に準備いいのはいいんだけどね、できれば仕事に活かしてねそういうのは。あとテロはしません」 佐原「テロボス!」 根岸「なんかもうそういう合言葉みたいになってるじゃないか」 佐原「というわけで」 根岸「なにがというわけなのか」 佐原「人数分パンツを用意しました」 根岸「……」 佐原「……」 根岸「……うん?」 佐原「パンツ!」 根岸「なんで」 佐原「パンツテロ!略してパンテロ!」 根岸「ツしか略されてないじゃないか。っていうかなんでパンツを調達してきたんだ」 佐原「売ってたのです」 根岸「そりゃね、売ってるよね。―――キミは、テロがしたいんじゃないのかね」 佐原「私がテロをしたいのではないのです、みんなで、テロをするのです!」 根岸「しないけどね」 佐原「これがボス用のパンツです。パンツボス!」 根岸「うん、いらない……」 佐原「パンツは武器ですからね、ひとり一丁です」 根岸「……んー。……あー。……なるほど、銃と数え方が一緒なのか」 佐原「偉い人にそっと近づき、被せると威厳もクソもなくなりますよ」 根岸「……そうだね」 佐原「ちなみにパンティーは一枚っぽいので武器ではありません!」 根岸「……そうかね」 佐原「ほかにもー、武器がー、えっと、どこだったかな」 根岸「パンツなぁ……」 佐原「あった、豆腐」 根岸「……」 佐原「豆腐!」 根岸「一丁か……」 佐原「豆腐の角に頭をぶつけさせて、要人を暗殺します」 根岸「あのね、とりあえず、パンツも豆腐も武器じゃないから」 佐原「丁で数えるのに!?」 根岸「その理屈でいけば、ミサイルは本で数えるんだから、キュウリもナスも武器になっちゃうだろう」 佐原「違うんですか!?」 根岸「違うねぇ」 佐原「買ってきたのに!」 根岸「……ほんと無駄に仕事が早いなぁ」 佐原「テロボス!」 根岸「……」 佐原「テロボス?」 根岸「……しないよ?」 佐原「ボス」 根岸「はい」 佐原「そもそも、テロリズムとはー。 政治的目的を達成するために手段を問わないアウトローでアナーキーなボンバイエなのですよ!」 根岸「……ボンバイエ」 佐原「ボンバイエ!」 根岸「……うん。後半はともかく、なんとなくわかってやってるのか。―――で、政治的目的はあるのかね、キミのやりたいテロ活動に」 佐原「セージ的目的……、つまりはハーブを植えたりとかですね!」 根岸「さっきちゃんと漢字で言えてたじゃないか……」 佐原「政治はよくわかりません。そういうのは偉い人たちの仕事です!」 根岸「間違ってはないんだけどな……。じゃあ俺たちの仕事はなんだ、言ってみろ」 佐原「悪い奴を捕まえます!」 根岸「わかってるじゃないか」 佐原「悪い役人とかも捕まえます!」 根岸「んー」 佐原「いかがですかな?」 根岸「……まあね、腐敗した組織の上層部とかが最終的には敵になるんだけど、どうにもならないことというのはままあるよ。ドラマとかでな」 佐原「そう、ドラマとかでみました! レッツテロ!」 根岸「……パンツと豆腐でか」 佐原「手段は問わないのですよ」 根岸「ああまあ、手段は選んでないね、いろんな意味で」 佐原「テロボス!」 根岸「気に入ったのかそれ」 佐原「テロボス!」 根岸「あのね、実際にはどんなに上層部がアレでも、何もできないんだよ。自分や、家族の生活を考えるとね、何を思っていてもどうにもならないし、できないの」 佐原「テロボスぅ……」 根岸「わかったら、今追ってる事件を―――」 佐原「わかった! あなたは、腐敗した組織に取り込まれたボス!」 根岸「まあ、抵抗できないという点では―――」 佐原「くらえ! パンツ!」 根岸「ごふぅ!」 佐原「おお、威厳がゼロに……」 根岸「……」 佐原「威厳ゼロですよボス!」 根岸「……」 佐原「テロボス!」 根岸「あのねぇ……」 佐原「ついでに、きゅうりの浅漬けを用意してあります」 根岸「何故……」 佐原「そして焼きナスと、煮浸し!」 根岸「……」 佐原「ビールもあるよ!」 根岸「……仕事中に」 佐原「食べられないのですか!? こんなにおいしそうなのに!」 根岸「……飯テロというやつか。腹が減ってきたな……」 佐原「テロ完遂ですか!? やりましたボス!」 根岸「……今日、仕事終わったら飲みにでも行くか?」 佐原「テロボス! わーいわーい!」 根岸「とりあえず、この料理は片付けておくように」 佐原「えぇぇ……、ナス嫌いなんですけど……」 根岸「キミが持ってきたのだろう。食べなさい」 佐原「……うぬぬぬぬ。自分で自分の首を絞めるとは……」 根岸「自爆テロというやつだな」 佐原「……違う気がしますボス」 根岸「ただの自爆だな」 佐原「イエスボス……」 閉幕
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