No.71『もともと特別なオンリーワン』

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No.71『もともと特別なオンリーワン』

根岸『ついにここまできました佐原選手……』 佐原「……」 根岸『さあスタートラインについた佐原選手、表情はやや固いか。この大舞台、緊張しているのやもしれません』 佐原「すっ」 根岸『右手を挙げました。競技開始のようです』 佐原「すっすっ」 根岸『違った! 右手を挙げる練習だ! これには審判も苦笑い! 一気に場の雰囲気を自分のものにしてしまいました!』 佐原「ニヤリ」 根岸『ニヤニヤしているー! 気持ち悪い! さっさと始めろ!』 佐原「すっ」 根岸『あ、右手を挙げました。今度こそ本番開始のようです』 佐原「……」 根岸『佐原若さ世界一選手権大会、その幕が、今!』 佐原「たったったったっ……」 根岸『……さあ佐原選手、まずはゆっくりと助走をつけて……』 佐原「……」 根岸『立ち止まった佐原選手、何かに背中を預ける動作、これは……』 佐原「……」 根岸『手持ち無沙汰そうです……。これは『片思い男子シリーズ』のうちひとつ『出待ち男子』です。おそらく相手の部活が終わるのを待っていますね』 佐原「……ん、おう……」 根岸『彼女が来たようです。偶然を装っていますね、さりげなく、さりげなくー、いいぞー』 佐原「今帰り? 俺も今部活終わったとこ……」 根岸『待ってたくせにー!』 佐原「……ちょうどいいから、と、途中まで一緒に帰んね?」 根岸『決まったー! 何がどう丁度いいのか! 照れからちょっと吃ってしまうのも見逃せません』 佐原「……」 根岸『さて、次はどう出るか……』 佐原「昨日さ、見ちゃったんだ」 根岸『声色を変えてきましたね、これは女性側視点ということでしょう』 佐原「女の人と歩いてるとこ……。綺麗な人だったね」 根岸『……』 佐原「へー、お姉さん……。ふーん」 根岸『……』 佐原「別に? あたしは何とも思ってないけど?」 根岸『『友達以上恋人未満シリーズ』のうち『拗ねて相手の出方を伺ってみる女子』ですね。高難度ですよ……。うまく決まればポイントは高い!』 佐原「……」 根岸『言い争いのジェスチャーだ、表現力が問われます』 佐原「いいよ、もう、帰る!」 根岸『涙目だー! どうやらこじれてしまった模様! 帰宅途中で帰る宣言! 男子の手を振りほどき、急に走り出しました!』 佐原「待てよ!」 根岸『視点が男子に戻ったようです……、これは、まさか』 佐原「待てってば……」 根岸『きゃー! 追いかけて抱きしめた! これはA難度『青春』! 決まったー! 耳元で囁いた言葉はおそらく、愛の告白でしょう!』 佐原「……」 根岸『……』 佐原「すー、はー」 根岸『場面が切り替わったようですね、深呼吸をする佐原選手』 佐原「人……人……」 根岸『手のひらに、人。そしてそれを、飲み込む! 細かく刻んできましたね。若さの表現としてはいまいちか』 佐原「課長、この業務なのですが、もっとこうしたほうが効率的なのではないかと思うのですが」 根岸『あー、これは『長年そのままだった業務に改善案を提示する部下』ですね。古い企業で新人がこれを行うのは諸刃の剣です』 佐原「……あ、はい……はい……」 根岸『あー、怒られてますね……余計なことを考えなくていい、と。古い体制はなかなか変わらないー』 佐原「……」 根岸『膝を抱えて悩み……』 佐原「辞めます」 根岸『辞職したー! 次の職も探していないくせにー!』 佐原「……」 根岸『佐原選手、次は……、寝転がり、丸まって……』 佐原「おぎゃー、おぎゃー!」 根岸「赤ちゃんだ! これは赤い! あ、いや、若い!」 佐原「おぎゃー! おぎゃー!」 根岸「見た目もみるみるうちに、若返っていく! これはすごいぞ! 最年少記録更新だ!」 佐原「おぎゃー! おぎゃー!」 根岸『……ここで、時間いっぱい! 最後は泣きじゃくって決めたー!』 佐原「ありがとー、ありがとー」 根岸『さあ、気になる得点は……』 佐原「どきどき」 根岸『12点! これは赤点だ!』 佐原「……赤ちゃんがまずかったか……」 根岸『しかし佐原選手、なんと優勝です! やりました!』 佐原「やったー! 優勝だー!」 根岸『ちょっと誰かルール教えて』 閉幕
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