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No.73『記憶情報カラノ未来予測デス』
佐原「ちょっとちょっと、根岸くん根岸くん、助手の根岸くん!」
根岸「はいはい、どうしましたか博士。また落ちてた物でも食べてお腹でも壊しましたか?」
佐原「ちくわは落ちてなかった! 鉄アレイばっか落ちてる!」
根岸「ハットリくんのゲームですか」
佐原「まあ儂の胃袋は無事じゃよ! 鉄アレイごときではびくともせん。そんなことよりコレを見るがいい!」
根岸「食べたんですか鉄アレイ」
佐原「これぞ、平成の次に来る元号が餅巾着になっちゃうくらいびっくりな新発明!」
根岸「餅巾着元年とかになるのか……」
佐原「その名も、ロボ根岸くん!」
根岸「……」
佐原「ロボ根岸くん!」
根岸「聞き間違いじゃなかった。割と悲しい」
佐原「ふふふのふ」
根岸「この丸い皿みたいなの、勝手に掃除してくれるロボットですよね」
佐原「ロボ根岸くん!」
根岸「僕の要素はどこにあるんですか」
佐原「勝手に掃除してくれるあたり」
根岸「そこ!? いや助手ですからね、掃除くらいはしますけどね?」
佐原「根岸くんが掃除すると、何がどこにあるかわからなくなるんじゃよ。勝手に整理整頓しちゃうから。まったく、お母さんかよ!」
根岸「いやだって、散らかりすぎですよ研究室」
佐原「しかしこのロボ根岸くんは違う! 勝手に片付けたりしないのじゃ!」
根岸「というか床しか掃除しないでしょコレ」
佐原「そこはどっこい、儂の発明品をなめてもらっちゃあ困る」
根岸「床以外も?」
佐原「壁もいける!」
根岸「割とすごい」
佐原「まあ机の上は管轄外なんだけども」
根岸「なるほど」
佐原「ちなみに、このロボ根岸くん、ただ掃除するから、根岸くんという名前なのではないのだよ」
根岸「それだけの理由で名づけられたのなら割と悲しいです」
佐原「根岸くんと同じ頭脳を持っているのじゃ! ぱんぱかぱーん!」
根岸「ほう……」
佐原「ちょちょいと寝てる間に根岸くんの記憶とかをコピーさせていただいたのじゃ!」
根岸「ちょちょいと」
佐原「ふふ、楽しみじゃなあ。コピーとオリジナルの戦い、そして負けるオリジナル」
根岸「負けるんですか、僕」
佐原「うむ、相手は機械の体とボディを持っておる」
根岸「ん……、うん」
佐原「さらに頭脳もAIじゃよ! ただの根岸くんが勝てるわけがない」
根岸「そういうのって、なんだかんだ成長するオリジナルが勝つ展開じゃないんですか? ロボットは結局過去の自分のコピーで、って」
佐原「成長するAIだからもう到底太刀打ちできない」
根岸「えぇ……」
佐原「そもそも、根岸くんの記憶と経験を引き継いでいて、根岸くんより頭の回転が早くて効率的な行動をするのじゃよ?」
根岸「そう聞くと勝てる気がしませんね」
佐原「うむ、しかも成長速度や学習速度も根岸くんより上じゃ」
根岸「わー」
佐原「だが、それでも彼はオリジナルではない。そこにドラマが生まれるわけじゃな。自分はコピーだと葛藤し、認める。最後の戦いで、彼はオリジナルに勝ちを譲り、壊れるのじゃ……」
根岸「……はあ」
佐原「ふふふ、楽しみじゃのう」
根岸「楽しみ、かなぁ」
佐原「というわけで、スイッチオン!」
ぴぽーぱぽー
根岸「やっぱり掃除のアレじゃないか」
オデンジャン!
佐原「おお、さっそく根岸くんの記憶を引き継いだAIが!」
オデンジャン! オデンジャン!
根岸「何を言ってるんですかこいつ。あと掃除しろよ」
佐原「うむ、根岸くんのツッコミ能力をフルに発揮しているようじゃな」
根岸「……こんなですか? 僕?」
佐原「うむ、むしろロボのほうが上じゃな」
根岸「まじかよ」
オデンジャン! オデンジャン!
佐原「うむうむ」
根岸「何に対してのツッコミなんだ……」
佐原「……お、掃除を始めたぞ」
根岸「いや、ここはさっき僕が掃除しましたし……」
ソウジオワッテルシ! ソウジオワッテルシ!
佐原「うむ、さすがはロボ根岸くんじゃな」
根岸「ううむ……」
コレカラ、ヨロシクオネガイシマス
佐原「……」
根岸「まあ、負担が減ったと思えば……」
佐原「失敗じゃ!」
根岸「何がですか」
佐原「セリフが片仮名!」
根岸「えぇ……、そんな割とどうでもいいポイント」
佐原「ポチっとな」
ちゅどーん!
根岸「ロボーーー!」
佐原「うむ、自爆はロマン」
根岸「お、おお……、血も涙もない……」
佐原「ロボットじゃからな、そんなものは無用じゃ!」
根岸「ひどい……」
佐原「多分、アレじゃな、ちょっとメカメカしく作りすぎたかな。だからきっとセリフが片仮名になっちゃったんじゃ。次は有機っぽく作ってみよう」
根岸「と、いうわけで」
佐原「できたぞ根岸くん! これぞ、ロボ根岸くん2号!」
根岸「……おー」
佐原「有機素材で作ってみたのじゃよ。これできっと平仮名でしゃべってくれるぞ」
根岸「これは」
佐原「水分量も、組成も、割とオリジナルの根岸くんに近づけてある。アミノ酸やタンパク質、脂質などもそれなりに含んでおり―――」
根岸「……」
佐原「有機素材が腐らないよう、下部から熱を加えることで水分の循環と出汁を染みこませ―――」
根岸「お」
佐原「こんにゃくや大根、ちくわぶといったメジャーな具材から、タマネギやタコなどの変わり種まで―――」
根岸「……」
佐原「出汁が染みているのでそのままで、アクセントに練りからしをつけて食べてもおいしい―――」
根岸「おでんじゃん!」
閉幕
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