はじめに

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はじめに

まずはじめに、これは事実を基にしてはいますが、あくまでもフィクションであることをご承知ください。 これを書こうと思い立った経緯は、 何も、音楽と共にこの道を選んでいるのは私だけではないだろうと言うこと。 それから、そこに正解があるのかどうかは別として、この生き方が私の思い描いていた笑顔の種を増やすことになることを、おこがましくも少なからず知っているからです。 そして、音楽とこの道はとても似ています。 『音楽は奏者のためのものではなく、聴いてくださるお客様のためのもの。』 この道を歩むことによって奇しくも出会った音楽教師のその言葉は、私の望んでいた言葉でもあり、今の私の信条ともなっています。 そう。 音楽とこの道は、大変似ているのです。 さらに、 志半ばであらゆる事情から諦めた友人たち。 そして、この道を選んだが故に、自らを追い詰めた友人たち。 さらに、この道を選んだが故に、道を踏み外した友人たち。 その友人たちがもしこの物語を見ることがあれば、今一度気づいて欲しいと思います。 それは、イバラの道。 人の命を預かると言うこと。 激務とともに、明けることのないプレッシャーに押し潰されそうになりながらも、さらに激しいジレンマに陥る道であること。 でも、それでも、 あなたの笑顔は、 あなたの差し伸べた手は、誰かの救いになっているのです。 どうか、今一度、あの時の志を思い出して欲しいと願います。 さらに、私のように、音楽と共にこの道を選んだ人も、私と同じように悩み苦しんでいる人は、少なからずいると思います。 私が今まで受けてきた言葉は、嬉しい言葉だけではありません。 例をあげると 楽な生き方をしている。 中途半端な生き方。 いい加減な生き方。 等々です。 音楽をしていることが、趣味や道楽と言われることが、音楽家としてどれだけ辛いことかは別として、そこは価値観の違いとして受け入れるしかありません。 もちろん、未だに言われることもあります。 でも、私がそうであるように、そんな場合には、こう思ってください。 『自分で決めた道。 誰にも邪魔はさせない。 例えたった一人でも、 絶対に乗り越えてみせる。』 そうです。 人はやっかみや、心ない言葉を、異端の存在に向けるものです。 ですが、音楽家がどれだけ見えない努力を重ねているか、日々の練習がどれだけ孤独で時に惨めか、ホールに立ったときのあの逃げ出したい気持ち、それでも音楽家であろうとすることの決意は、音楽家でなければ絶対にわからないものです。 その心理は音楽家でないとわからないけれど、同時に音楽家は絶対にそこからは逃げられない。 なぜなら、それは、自分自身から逃げることを意味するからです。 どれだけ逃げても、自分自身からは逃げることなど出来ないのです。 でも、音楽家なら知っていることですが、その先にこそ、喜びと感動と共に、笑顔があるのです。 そう、だからこそ、音楽とこの道はとても似ているのです。 さらに、これからこのイバラの道を歩もうとされる方がもしいらっしゃったら、その方の支えになれば幸いと、おこがましくも考えております。 辛いこともあります。 やりきれなくて悲しいときもあります。 でも、目には見えない祈りが、心の支えになるように、あなたの差し伸べたその手は、確かに誰かの心を暖かくしているのです。 祈りは目には見えない些細なものかもしれません。 ですが、祈りは必ず大きな支えとなります。
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