依頼その1 家出少年の捜索

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「知っていたら真っ先に言うと思うよ。だから、ここまでの不良グループとは知らないんじゃないかな? ちょっとやんちゃな友達とつるんでいる程度にしか思ってなかったり」 「そうか? 俺は違うなぁ。あの母親、本当は知っていて、警察沙汰になる前に見つけて内々で処理しようと思っている。だから探偵事務所に依頼しに来た」 「えぇ~そんな風には見えなかったけど」 「龍臣、見た目に騙されちゃいけないぞ。人を見る目は探偵にとって大事だからな。でもまぁ、母親の勘についてはあながち間違っていないかもよ」 「トラブルに巻き込まれているって話? ……ありそうな話だね」  今は下校時間なので、もちろん夕方だ。陽が落ちるのが早い冬。もう空は夜に傾いている。刺すような寒さの風が通り抜けていった。身を震わしながら僕は健太くんに尋ねる。 「これからどうするの?」 「とりあえず、その不良グループについて調べないとなぁ。グループに接触する前に、予備知識ぐらいは入れておきたいし。まぁ有名らしいから、ちょっとやんちゃな奴に聞けばすぐにわかるだろうぜ」  そう言ってニヤニヤ笑う健太くん。なんだか楽しそうだ。ただの家出息子捜索に事件の香りを感じ取ったからだろうか。不謹慎極まりないその表情に僕は呆れてしまうが、自分も同じような気持ちを抱いたことがあるので、あまり文句を言える立場では無かった。  極論どんな気持ちでも別に構わないのだ、結果的に早く一輝くんが見つかればいいのだから。僕は寒空のもと、改めて気を引き締めた。 「不良のたまり場って言ったら、やっぱりゲーセンだよなぁ。龍臣は来たことあんの?」 「えっ? 聞こえないんだけど!」  ガラガラジャンジャン、せわしない音が鳴り響くゲームセンター内。ほとんど来たことのない僕には、この音はただの拷問だった。何が楽しくて、こんなにうるさくて目がちかちかするところに行くのだろう。自分でも分かるほどに、僕の顔はしかめっ面状態だ。健太くんに話しかけるにしても、大声でなければ会話が成立しなかった。  なぜか健太くんは僕の顔を見ながら笑っている。分かってはいたが、そんなにひどい顔をしているのだろうかと、僕の気持ちを更に下げさせる。  比較的静かな場所を見つけ、僕はほっと胸をなでおろした。静かって素晴らしい。だけど耳の中ではまだあの騒音が残っている。
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