依頼その1 家出少年の捜索

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「まぁね。でも聞いた話だから、実際のところはよく知らないよ。興味もないし」 「いや、助かった。ありがとよ」  健太くんと僕は、再び静かな場所へと戻った。僕はもちろん、健太くんも浮かない顔だった。きっと、僕たちは同じことを考えているに違いない。僕はそれを健太くんに確認するのが怖かった。もし本当に同じだったら、それはそれで、その考えが現実味を帯びてくるような気がしたからだ。だが確認しないわけにもいかない。 「健太くん、リーダーの工藤を襲った新入りって……」 「あぁ、藤村一輝かもしれないなぁ。今の段階では憶測でしかないが、その可能性は高そうだ。もしかしたら、仲間から逃げ回っているのかもしれない」 「家に帰れない理由にもなるね」  家出息子を探すはずが、話は思ってもみない方向へと進んで行っている。それでも僕の中で腑に落ちないこともあった。  依頼人の藤村亜希子さん、母親の話では一輝くんは頭が良いが、気が小さく内弁慶なところがあるらしい。同級生も頭の良いやつだと言っていた。そんな人物が、何かあったからといって、いきなりリーダーを襲ったりするだろうか。その後どうなるかぐらいは、頭の良い一輝くんならわかるはず。  この短絡的な犯行は彼の人物像に当てはまらない。それに気が小さいなら、なおさら百戦錬磨のリーダーを襲うなど無理なような気がする。僕なら恐れ多くて、手を出そうなんて思わない。  本当に藤村一輝が犯人なのだろうか?   その疑問はぐるぐると回り続け、僕の中から消えることは無かった。
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