依頼その2 猫の集会襲撃事件

2/31
230人が本棚に入れています
本棚に追加
/142ページ
        1  僕が買い出しから戻ると、凄い光景が広がっていた。  驚きすぎてスーパーの袋を落としてしまう。袋の中の卵が心配になったが、それどころではなかった。  その音でぎょっとするのは、健太くんと見知らぬ女の子。その横ではお菊ちゃんがおろおろしている。牛久所長は外出中、大神さんはお休みだった。事務所には四人しかいないが、目の前の光景はどう考えてみても、見てはいけないシロモノだった。  ソファの上で健太くんに馬乗り状態の女の子。健太くんの服は乱れて、髪もぼさぼさ状態加えて息も乱れている。  女の子は先ほどから僕を睨んでいた。逢瀬を邪魔されたから怒っているのだろうか。じゃあ、ソファ横のお菊ちゃんの存在は? 理解不能の光景にフリーズしてしまう。  女の子は見た目から女子大生っぽく、少し吊り上がったような猫目が印象的だった。少しきつい感じにも見えなくはないが、なかなか可愛らしい女の子である。  茫然とする僕に、健太くんは急いで釈明と救助を求めた。 「ち、違う、誤解だ。こいつとはそんな関係じゃないんだ! そ、それよりも助けてくれ、龍臣。このままじゃ殺される~」 「何バカなこと言ってんのよ! お金返さないあんたが悪いんでしょうが」  そう言って女の子は、健太くんの首を遠慮なく締めあげる。苦悶の表情の健太くんだが、今の会話ですべてを察する僕。なんだ、そういうことではなかったのか。  今日の健太くんの服装はピンクの頭に派手な黒の革ジャン(狐の変化能力で彼は毎日髪と服が違う)言われてみれば、金欠パンクロッカーの修羅場のように見える。まぁそういうことなら助ける必要はないだろう。  健太くんが必死に手を伸ばし、呆れ顔の僕に救いの目を向けてくる。かわいそうだと思うが、いつもからかわれていること思い出した僕は悪魔の笑みを浮かべる。
/142ページ

最初のコメントを投稿しよう!