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Order 021
真奈美が、警察にロトや仲間の白人の男と共に連行された後日――。
柊も事件に関わっていた人物として、ロンドン市警察へと行くことなった。
その後――被害者であるココ·グラッドスト―ンの証言や、何よりも誘拐したロト自身がすべてを話したので、真奈美、柊は共におとがめなしということに。
ただ、全身を骨折していた重傷者であるロトに対しての真奈美の行動は、行き過ぎた面もあると過剰防衛扱いにされ、社会内処遇――保護観察とされた。
それでも真奈美はまったく気にはしていなかった。
何故ならロンドン市警察の署長が、彼女の保護観察官をマーク·グリーンノアに任せたからだった。
実をいうとこの件は、法律の外の話であり、真奈美に下された処分は厳重注意とさほど変わらないもので、単にマークの仕事が増やされたという結果に終わる。
事件後にココは、叔母であるエルメス·グラッドスト―ンへ、自分の勝手行動――家出で迷惑と心配をかけてしまったことを謝り、エルメスも自分がもっと話を聞いてあげればよかったと、泣き崩れた。
ココが家を飛び出した原因となった白い野良猫。
その猫は、ココに“キュベレー”と名付けられた。
「じゃあ、ココちゃんの家で飼えないんなら、キュベレーはここに住めばいいよ」
真奈美の発言に、柊は飲食店で動物を飼うことは問題ないのかと心配そうに訊ねたが、彼女は「ヘーキヘーキ」とあっけらかんと返事をする。
右手を顔に押し当て、俯く柊。
彼は猫を飼うことに反対というわけではなかったが、その何も考えていない真奈美の態度を見ての苦い顔をしている。
「柊さん……。真奈美が面倒見なくてもちゃんとあたしが世話するから、この子はうちで飼ってあげよう」
桐花からも乞われ、こうして白い野良猫キュベレーは、たこ焼きカフェビアンキで飼うこととなった。
ココは桐花に会いに、たこ焼きカフェビアンキへ来れば、いつでもキュベレーと会えることを喜んでいた。
ただ、桐花は――。
「そんな毎日来なくてもいいじゃないの」
「何よその言い方は! そんなこという桐花にはこれよ! 喰らえ、ファンネル!!」
さすがにウザったくなった桐花が憎まれ口を叩くと、ココが直したばかりの小型ドローンを使って水を吹きかける。
「ちょ、ちょっとココったらやめなさい!? 髪がビショビショになるでしょ!!」
「ふふ、さあ桐花。今日こそ決着をつける!」
二人を呆れて見ている柊。
カフェ内にあった太った黒猫のぬいぐるみに寄りかかって眠っているキュベレー。
真奈美がそれを見て微笑むと、さきほど焼いたばかりのたこ焼きを持って店から出て行こうとする。
「じゃあ、マークのとこ行ってくるね」
「おいおい、それは署内全員分の差し入れか?」
真奈美が、両手に大量のたこ焼きの入ったビニール袋を持っていたためか、柊が訊くと――。
「うん。あと捕まっちゃった人たちの分も渡してくる」
どうやら真奈美は、マークたち警察官だけではなく、刑務所にいるロトや白人の男たちの分も作ったようだ。
それを聞いて、大きくため息を吐く柊。
そんな彼を見て、争っていた桐花とココが手を止める。
「はあ~、あいつはどこまでお人好しなんだよ。ホント兄貴にそっくりだな……」
「そういう柊さんだって、“何かあっても俺は助けたりなんかしねえ”って言ってたくせに」
苦い顔をして言う柊へ、桐花が意地の悪い顔をして言った。
ココはそれを見ながら桐花と同じ顔になっている。
柊は「大人をからかうな」と言うと、厨房へと入り、たこ焼きの仕込みを始めた。
「ねえ、真奈美って昔からああいう人なの?」
ココに訊ねられた桐花は、眠っているキュベレーを抱いて、太った黒猫のぬいぐるみに寄りかかった。
「ええ、あたしが会った頃からずっとああいうウザったい人だったわ」
微笑みながら言う桐花。
そんな彼女に寄りかかられている黒猫のぬいぐるみが、微かに頷いているように動いた。
――と、桐花は我ながら気持ち悪いと思いながらも、そんなことを考えてしまっていた。
了
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