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遮るように宣言すれば、「えッ!?」とはじめの声が上ずった。
「よ、依ちゃん?」
「だって、遠恋とか私無理だし、幾らスマホがあるって言っても、実際に会えるわけじゃないしさ。向こうで彼氏作る方が合理的じゃない? 色んな意味で」
「え? でも、だって、海斗君は」
「私さぁ、元カレ信じて無駄な遠距離恋愛を一年もしてたでしょ? 海斗にはそんな思いはさせたくないって切実に思ってるワケ」
「依ちゃん…」
「泣いた私が、向こうで心変わりして海斗泣かせるとか、シャレにならないし」
「こ、心変わりしないかも知れないじゃない!」
「人の気持ちだよ。保証なんか出来ない。人口が何倍にもなる分、この町にいる時より、きっと沢山の出会いがあるしね」
二つ年上の真面目だった元カレが、半年で私を裏切りながらも素知らぬ顔が出来る男に成り下がるほど、人との出会いは良し悪し含めてきっと多い。
「依ちゃん…」
私の過去の恋を知っている人の好いはじめは、目を潤ませて私を見つめている。
「――――――そういう事だからさ」
その言葉は誰に向けたものなのかと、はじめがギョッとした様子でドアの方を振り返った。
「海斗君ッ! あの、今のは、」
はじめの、動揺しかない声を撥ね除けて、私ははっきりと口にする。
「卒業まで残り少ないけど、それまではよろしくね、海斗」
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