恋の鍵を

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「何って鍵を……わ?壮ちゃん?」 夢中になっていた彼女の背後には彼が立っていた。 「もしかして。勝手に外そうとしているの」 「勝手って。まあ、そうかもしれないけど」 「はい、美樹。手を出して」 「??」 彼は彼女の手のひらに、古い鍵をそっと乗せた。 「その南京錠の鍵だよ」 「壮ちゃんが持っていたの……そうか」 美樹はぶわと涙が溢れてきた。 「……どうして、泣くの」 「だって。壮ちゃんも鍵を外しに来たってことでしょう?そうよね。もう、終わったんだから……」 涙を拭う彼女を彼はぐっと抱きしめた。 「美樹……!ごめん、本当にごめん!」 懐かしい彼の匂いに美樹は目をぐっと瞑った。 「壮ちゃん。もういいんだよ。気にしないで?私は……大丈夫だよ」 「そうじゃない。僕が大丈夫じゃないんだ。お願い、美樹」 そういって彼は両手で彼女の顔を包んだ。 「好きなんだ……。いなくなって、よくわかったんだ」 「ウソだよ……」 「本当だよ?美樹がさ、出て行くって思わなかった」 そういって彼はおでこを彼女にくっつけた。 そこに彼の涙を見た美樹は胸が熱くなった。 「……それにさ。あんなに手入れしてたのに、髪も切って。僕のせいで」 「まあね」 「美樹あのね。これ……」 そういって彼はポケットから指輪のケースを取り出した。 「結婚してください。僕と……一緒にいて下さい」 そんな目を真っ赤にしている彼の胸に美樹はスッと飛び込んだ。 「本当に?」 「うん」 彼女はそっと胸の中から彼を見上げた。 「わかった。壮ちゃん。こちらこそ。お願いします」 「はああ?良かった……」 ほっとした彼は、大きくフワと彼女をまた抱きしめた。 そんな彼に彼女は指輪をつけて欲しいとお願いした。 「綺麗……ありがとう」 「よかった」 朝の光で指輪は光っていた。 「でもね。その指輪ケースちょうだい。よっと」 「何?もしかしてその鍵を入れるの?」 うん!と美樹は南京錠を外しながらうなづいた。 「だってさ。私達の縁結びでしょう?」 「そうだね。ねえ、美樹……」 「なに?」 「好きだよ」 「私も」 爽やかな朝焼けの中。 南京錠達に見つめられた恋人達は熱いキスを交わしキラキラと輝いていたのだった。 FIN
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