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「その治療法はいつできるの?」
WHOを名乗る二人の男を、包帯のせいで睨みつけることも出来ず、由奈は精一杯強い口調で尋ねた。何故自分が眼を取り出さなくてはならないのか。自分に命の危険がないならそちらの選択肢はありえない。
「数ヶ月後かもしれないし、数年後かもしれない。あなたが協力してくれるなら期間は短縮されるだろう」
――協力? 実験体になれってこと?
「考えさせて」
「もちろん、ゆっくり考えてくれて構わない」
「ところで、眼球の摘出するなら、その手術をする医師は感染しないの?」
「ロボットアームを使った手術になる。問題ない」
無愛想な二人組は由奈に施設での過ごし方をレクチャーした後帰っていった。
由奈の目に巻かれた包帯は一人の時には外しても構わない。施設内は完全に隔離されており、由奈の行ける範囲に人はいない。
食事は専用の昇降機で運ばれ、一日に数回、経過観察の為血圧や体重を測り、網膜スキャンを行う。
これらは自分で行わなければならない。
それに、重要な注意事項が一つ。
「絶対に鏡を見ないこと」
「鏡を見たらどうなるの?」
「第三の選択肢だ」
男の言わんとしていることは理解できた。鏡を見たら由奈は死ぬのだ。自分の目に殺される。
どうせ誰もいない。化粧をする必要もないし、鏡を見なくても生きてはいける。
ベッドに横になると、由奈はどうやってここを出るかを考え始めた。
――こんなところでいつまでも隔離されるなんてありえない。どうせなら日本に帰って治療を受けた方がましよ!
日本に帰らせて欲しいという由奈の意思は聞き入れてもらえなかった。
それなら方法は一つ。逃げ出す他ない。
幸い……
由奈はほくそ笑んだ。由奈は丸腰ではない。今や最強の武器を持っているではないか。
――邪魔する奴はこの目で殺す。なんちゃってね。
高級リゾート、とまではいかないが、昨日のホテルよりは格段にましなシャワールームへ行くと、由奈は服を脱ぎ捨てた。
鏡のない浴室。バスタブに湯を張ろうとスイッチを入れると、白濁したアルストロメリアの香りの湯が沸き上がる。
窓ガラスは全て磨りガラス。由奈が今どんな顔をしているか知る者はいない。
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