前世の記憶、思い出しました

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 幸い、メルコリーニ公爵家は、公爵が優秀な成績で学園を卒業したということもあり、シルヴィアーナの素質に気づいたあとは、公爵自ら訓練してくれた。  あまりにも訓練が過酷で、何度か死にかけたが、そのたびに引きずり戻されたのは、母親が超有能回復魔術の使い手だったからだ。  学園に入学するのと同時に、偽名で冒険者としての活動を開始。そして、先ほどの婚約破棄にいたるわけである。 (それにしても、いいタイミングで転送陣を発動できたわよね。昨日のうちに転送陣を描いておいてよかった)  シルヴィアーナが、大講堂、衆人環視の前から一瞬にして姿を消したのは、転送陣を発動したからだった。  瞬間的にあらかじめ定めたところに移動することのできる転送陣は、遠方との行き来に非常に効果を発揮する。  だが、陣を描くのも発動するのも、かなり多量の魔力を必要とするため、使える者はさほど多くない。 「無事に婚約破棄できたおかげで……のんびりスローライフ!」  実のところ、公爵家の令嬢というのもなかなかブラックである。  おまけに冒険者としてのシルヴィアーナも有能であったことから、日々の勤務はかなりの長時間にわたっていた。  だが、それも今日までで終了である。家族には事前に話をしてあるし、このまま出かけてしまって問題ない。  ――それに、いつ帰ってきても問題ないのである。  なにせ、転送陣はいくらでも用意することができるのだから。   
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