さあ!スローライフを始めよう

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「さーて、これから忙しくなるわよね」  鏡の前に駆け寄り、縦ロールのままの黒髪を首の後ろで一つに束ねる。  二階は寝室が三つ。ひとつがシルヴィの部屋で、あとは客用寝室にする予定だ。今のところ、客人が宿泊する予定はないけれど。  一階に下りれば、そこはキッチンの他にもう二部屋。もともと家族で住んでいた建物を買い取ったので、部屋の数はそれなりにある。 「まずは、全部使えるかどうかのチェックよね」  独り言がやけに多いがしかたない。実家を出て一人暮らしをするのは前世で経験済みだが、今世では初めてなのだから。  前世は前世、今世は今世である。  最初に向かったのはキッチン。保管庫を開けて中を確認する。  この保管庫には魔法がかけられていて、置かれている食べ物の鮮度をキープしてくれる。収納魔法の応用だ。 「パンはある、卵もある。バター……は、ないな」  キッチンは、前世が日本人であるシルヴィの目から見ても一通りの調理器具はそろっていた。もっとも、魔石というのがそもそも高価な品なので、一般の家庭でここまで揃っていることはめったにない。
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