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「問題なんてないわよ? あんな形で婚約破棄を叩きつけておいて、王家の方々がシルヴィちゃんに話を聞きたいって言うんだもの。迎えに来るしかないじゃない」
「お父様とお母様にお任せするわけにはいかない? クリストファー殿下の顔を見たら」
「顔を見たら?」
「全力で殴り飛ばしてしまいそうだもの」
婚約していた期間、手を出さなかったのは、シルヴィが本気を出せば相手を完全につぶしてしまうことがわかっていたからだ。
だが、あれだけこけにしたシルヴィを呼び出そうというのだから、そのくらいは覚悟しているということなのだろうか。
だったら、平手の一発や二発お見舞いしてやりたいところだ。シルヴィ渾身の平手をくらったクリストファーがどうなるのかはわからないが。
「殴るのはなしよ、シルヴィちゃん。でも、後始末はきちんとしておかないと――ね?」
「……大講堂でちゃんとすませたと思うんだけど」
「あれですませたつもりなの?」
こちらを見る母の目が、ゆっくりと細められる。
その表情に危険なものを覚え、シルヴィはこくりとうなずいたのだった。
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