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「……お前が時水晶ですべての行動を記録すると言い出した時には、何を愚かなことを口にするのだと思ったが……父を許しておくれ」
「いえ、いいのよお父様。本来、学園内は安全でなければならないんだもの。私の用心が過剰と言えば過剰だわ」
「お前の言う通り、役には立ったがね……時水晶はかなり高価な品だ。お前の稼ぎも半分以上そちらに使われただろう。なぜ散財するのかと思っていたよ」
「おかげで、農場の整備にお金が足りなくなったわ」
シルヴィの手を取り、父はさめざめと涙を流す。見た目はわりとごついくせに涙もろい。
だが、娘を愛してくれているのはかわりないので、シルヴィはそっとハンカチを差し出すにとどめておいた。
「いえ、本当……時水晶にすべてを記録しておいてよかったわ。今日お渡しするつもりだけれど、殿下の言い分と私の言い分、どちらが正しいのかはすぐに決着がつくでしょう」
正直に言えば、あの場で時水晶を出してもよかった。そうしなかったのは、シルヴィがあの場ですべてを説明するのは面倒くさいと思ったからだ。
クリストファーの方は婚約破棄する気満々だったし、受け入れればそれですむと思っていた。
だが、こうして身なりを整えて王宮へ行かねばならないとなると、あの場で全部ぶちまけておいた方が楽だったかもしれない。
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