売られた喧嘩は倍で買いましょう

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売られた喧嘩は倍で買いましょう

(……まったく、何のためにダンジョンに潜っているのかわからなかったわよね)  馬車に乗り込み、王宮を目指しながらシルヴィは遠い目になった。  時水晶とは、ゲームにおいてはセーブアイテムとして使われていたアイテムだ。ゲーム内では、普通に戦闘していれば、入手はさほど苦労しなかった。  だが、生まれ変わったこの世界では違い、魔物が落とす魔石――水晶――から魔道具として作らねばならない。  魔物が倒された時に落とす宝石を、魔石と呼ぶのだが、種類はいろいろだ。ダイヤモンド、ルビー、サファイア、エメラルド等。それらの中に水晶も含まれる。  鉱山で産出される宝石と違うのは、加工することでエネルギー源としたり、魔道具として使うことができるということだ。  時水晶は、使用者の周囲の状況を記録することができる。   ただ、時水晶の名が示す通り、無色透明の水晶からしか作ることができず、加工には手間がかかるため、非常に高価な品であった。  公爵家の令嬢であるシルヴィのお小遣いでも足りず、せっせとダンジョンに潜っていたのは、スローライフを始めるための資金を用意するというだけではなく、時水晶を入手するための費用を作るためといった面もあった。
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