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王宮に到着するなり、メルコリーニ公爵家の面々は、王家の人々が待ち構えている広間に案内された。
広間に待っていたのは、王と王妃、そしてクリストファーとその弟であるエドガーだ。 末の王子は今は他国に留学中なので、この場にはいない。帰国後に聖エイディーネ学園に編入することになっている。
クリストファーとエドガーは、よく似た兄弟だった。顔立ちは似ているのだが、受ける印象はまるで違う。
クリストファーはよく言えば貴公子、悪く言えば軟弱そうな雰囲気だ。それと引き換えエドガーは、武人気質とでもいうべきか、強そうな雰囲気を漂わせている。
身に着けている品は、上質のものであったけれど、兄ほど身なりにも気を使わないらしい。兄と同じハシバミ色の髪は、手櫛でさっと整えただけのようだ。
シルヴィをにらみつけている彼の目つきは非常に悪いものであるが、事情が事情なのでこれはしかたないだろう。
学園にいる間、友人達にはもっとにこやかに接していたのを知っている。
(……同級生なのに、エドガー殿下とは接点がなかったわよね)
エドガーはシルヴィと同じ年、クリストファーは二歳年長である。二歳年長なのに学園にいるカティアと接点があったのは、卒業後もカティアに会うために『将来有望な後輩を指導する』という名目でせっせと通っていたからだ。
(自主訓練に来る卒業生もいるというのに、クリストファー殿下はデートのためだったものね)
そんなことを思いながら、ちらりとクリストファーの方に目を向ける。彼は傲然とこちらを見返してきた。
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