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二年前にクリストファーが卒業したあとも、『王太子殿下の婚約者』として、うかつな行動をとるわけにもいかない。余計な噂にならないよう、男子生徒とは一対一で話すことすらなかった。
一年前、カティアが編入してきてからは、事態はますます悪化した。
クリストファーとカティアが顔を合わせたのは、入学式当日のことだ。入学式で、学園生活の基本的な注意事項を伝達するからとカティアも入学式に参加することになっていた。
カティアの何がクリストファーをそんなに引き付けたのかは不明だが、卒業したあとは学園によりつかなかったクリストファーが、『後輩を指導する』の名目でしょっちゅう学園を訪れるようになったのだから、よほど彼女に惹かれたのだろう。
(……その間、私は放置プレイをくらっていたけどね!)
カティアが現れて以降、それまではそれなりに礼儀正しくお付き合いしていたクリストファーは、シルヴィアーナのことなど忘れ去ってしまったようだった。
月に一度のお茶会など忘れ去られたし、王宮に伺候した時すれ違っても、おざなりな挨拶で終了。
本来シルヴィアーナと過ごすはずの時間をカティアと使っていたのだから、よほどのぼせ上っているのだろう。シルヴィアーナの面目は、丸つぶれである。
(……まさか、『恋して☆ダンジョン』の世界に生まれるとは思ってなかったわよね)
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