前世の記憶、思い出しました

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前世の記憶、思い出しました

 そんなシルヴィアーナが覚醒したのは、八歳の誕生日を迎えた当日のことだった。  前世では日本という国で育ち、ブラック企業に就職したのち、社畜として毎日日付が変わるまできりきり働かされた。  心の癒しは、ハンドメイドにいそしんだりお菓子を作ったりすること。   わずかな休みの日に、ちまちま針を動かして小物を作ったり、ペンチやニッパーを握って、アクセサリーパーツを組み合わせてアクセサリーを作ったり。出来上がった品は、ハンドメイドの品を扱うサイトで販売していた。  趣味のお菓子作りにいそしむこともあったし、作り置きの料理を大量に仕込むこともあった。  だが、仕事はブラック。過労死ぎりぎりのとこで働き続け、たぶん仕事の帰りに事故かなんかで死んだのだろう。   死んでしまったものはしかたがないので、前世のことについてはあまり考えないようにしている。  ゲームの世界に生まれ変わったことについて、シルヴィアーナは切り替えが早かった。   おそらく、余人が思う以上に切り替えが早かった。 『悪役令嬢に生まれ変わってしまったのはしかたない。よし、それならば、悪役令嬢を引退したあと好きなことをしよう!』  と、記憶が戻った当日に決意したのだから、なかなかの猛者である。 (在学中に、S級冒険者までクリアしていてよかったわよね。さすがラスボス)
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