自由な君に憧れて

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「・・・葵? みぃ? どうしてそんな風にしてるの?」 「だって、みぃが・・・」 「葵が答えてくれないからでしょー!」  ぷくーっと頬を膨らませる美以子の前には香音。そして、その後ろに隠れるように葵がいる。そのせいで思うように質問ができず、美以子はすっかり御冠だ。  前の美以子、挟まれた香音、隠れる葵。3人の膠着状態はしばらくの間続き、予鈴が鳴ったことで全員が違う場所に散った。  葵がやってきた女性の担任教師の元に。香音は席につき、未だ頬を膨らませたままの美以子は仕方なさげに香音の隣にある自身の席につく。そしてふたりが話し始めたのを見届けてから、葵は教師から仮入部に必要な書類を受け取った。  嬉しくて頬を緩めると、教師が安心したように微笑んだ。 「よかった。清水さんが、部活に入る気になってくれて」 「・・・え?」 「これまで、部活も何にもしてなかったでしょう? ちょっと心配してたの」  だから安心したのだと教師に言われ、葵は思わず貰ったばかりの書類で顔を隠した。なんだか気恥ずかしかったからだ。くすくすという忍び笑いに見送られ、顔を隠したまま席に戻る。 「よっ、葵。それ、仮入部用のやつ?」 「あ、うん。そうで・・・そうだよ」  癖で敬語になりそうになり、寸前でなんとかタメ口にする。一週間は経つものの、タメ口や呼び捨てにするのはまだ慣れない。  最近、やっと未果は大丈夫になったものの、颯斗と碧は名字で呼んでしまうことが多々ある。 (がんばって、直さないと。早く馴染みたいし・・・)
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