20人が本棚に入れています
本棚に追加
あれから、しばらくたちました。
ルーンはレンさんがどうなったのか、知りません。
なにしろ、あれからずっとおばあさんと話もしていなければ、顔も合わせていません。
もちろん、ご飯も食べていません。
ルーンはレンさんが連れてかれてからも窓辺のテーブルで待ち続けました。
おばあさんは心配していたようですが、何を言っても動くことのないルーンをどうすることもできませんでした。
“そとのせかい”では木の葉が緑から黄色にかわりました。
それでもレンさんは来ません。
“そとのせかい”の空気がとても冷たくなりました。
白い綿のようなものもちらちらと舞っています。
それでもレンさんは来ません。
その間、ルーンはどんどん弱っていきました。
それでもルーンは窓から離れようとはせず、ずっとレンさんを待っていました。
しばらくして、暖かな空気が窓から入ってくるようになりました。
でもルーンはもう動くことすらできなくなっていました。
ふわふわだった毛も今ではもうぼろぼろになり、昔の面影はまったくありません。
『こっちにおいで』
そんな時、暖かな空気がルーンを呼びました。
ルーンはピクリと耳を動かし、その声のほうを見ました。
いつの間にか窓は開き、そこから空気が入ってきたようです。
そして、その窓から“たいよう”の光がルーンを照らしました。
『こっちにおいで』
“たいよう”もルーンを呼びました。
ルーンは持てるだけの力を振り絞り、立ち上がりました。
すると木の上に何かがいるのを見つけました。
「こっちにおいで、ルーン。」
そう言ったのはあのレンさんでした。
でもルーンは走ることができません。
そんな力はもう残っていないからです。
レンさんがルーンのもとに走っていきます。
でもルーンは力なく、ぱたりと倒れてしまいました。
最初のコメントを投稿しよう!