黒ネコのおはなし

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 ……ざわざわざわ  どこからか聞いたことのない音。  この音はルーンの知っている“なかのせかい”の音ではありません。  ……ざわざわざわ  それと同時に知らないにおいがします。  これも“なかのせかい”のにおいではありません。  ……ざわざわざわ  どこからするのだろう  ルーンはその知らない“なにか”を探しはじめました。  ルーンは階段をかけ下り  その場所を探します。  廊下を走り大部屋に入ます。  でもここでもありません。  ……ざわざわざわ  ルーンはまた廊下を走ります。  だんだんその場所に近づいてきました。  ……ざわざわざわ  ピーンと張ったルーンのしっぽを何かがなでました。  どうやら、ルーンの知らないことがどこかで起きているのです。  ……ざわざわざわ  音がするのはもう近く。  もうすぐそこです。  ルーンは廊下の隅に置かれたテーブルの上にぴょんと飛び乗りました。  あぁ、これだ。  ぽっかり開いた一つの小さな窓。  ここから音が聞こえてきます。  ……ざわざわざわ  ルーンは今までこの家の中しか知りません。  そう、ルーンは一度も外に出たことがないのです。  一緒に暮らしているおばあさんは口癖のようにいつも言っていました。  『“そとのせかい”は危ない』  ルーンにとって、知っている人が一緒に暮らしているおばあさんしかいません。  だからルーンは外に出ようと思いませんでした。  ルーンははじめて見る世界に驚いていました。  この“なかのせかい”よりも大きな木があると言うこと  そしてその木がこんな近くにあったということ  “そとのせかい”では空気が動いていること  そして光があるということ  ルーンは自分の知らなかったものすべてをじっくりと眺めていました。  だから気がつきませんでした。  そこに何かがいると言うことを
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