第二章 舞踏会のシンデレラ

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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ヨシノが化粧室から出てくると そこにジャーナリストの 藤井幸平が立っていた ハッとヨシノは息を飲んだが ここで怯むわけにはいかなかった   「彼とはどういう関係だ?」 「あなたの知ったことじゃないわ」 やった! 言ってやったわ! ヨシノは心の中でガッツポーズをした もう目に涙を浮かべて何も言えず 逃げ出す弱い自分とはおさらばだ ここ数時間周防トオルと 一緒にいたおかげで 彼の暗雲のような毒々しさが 少しは自分に身についたかもしれない 藤井は口元を引き締め さらにヨシノに詰め寄った 「あの男とキスをしたのは 僕に嫉妬させるためか? それとも僕を早く忘れるためか?」 「彼とキスをしたのは 彼がセクシーだからであなたの事は 既婚者と知った瞬間に興味を失ったわ」 本当にその通りだと気付きヨシノは 感動が胸に広がるのを感じた 「君が僕を愛しているのは分かっている」 「うぬぼれないで! 私は別の女性と 結婚している男なんか愛せないわ」 声と手がかすかに震えた 「あなたには奥さんが家族がいるわ」 「それはいずれなんとかする」 「よくもそんなことが言えるわね?」 ヨシノはゾッとして彼を見据えた 「家族は使い捨てにできるものではないのよ 自分の都合でなんとかできるものでもない どんな事があっても支えあうのが 家族だわ 」 嫌悪感にむかつきながら 彼の横をすりぬけようとしたら 彼がヨシノの腕をつかんだ
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