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「確かに彼女は魅力的よね
少し世間知らずなところが男性の保護本能をかきたてるというか・・・・ 」
トオルの隣の席の稲垣夫人が
冷ややかな目線を彼にむけるのを感じた
裕福な年配の女性がよくしている
明るめの短かくカールした髪形を
見ているとトオルは南アフリカの
カラフルなオウムを思い出した
彼女は今は耳に落ちそうなほどの大きな
サファイヤのピアスと同じほど
怪しく目を光らせて周りを見渡している
稲垣夫人はこのパーティーの重要な人物で
多額の寄付をこのリゾートにしている
そんな彼女の嫌味を横で聞き流しながら
今はトオルは遠くの席でヨシノが
二人の中国人の大富豪を相手に屈託のない
笑い声をあげているのをじっと見ていた
そして信じられないことに
二人のうち一人が今回最も
トオルが会いたかった
グー・チェン・チョウだった
二人とも社交の場でも絶対母国語で話すといった傲慢な態度で知られている
寡黙でよそよそしく
近寄りがたい所があるその二人が
今はヨシノの話に喜んで耳を傾けているようだ
ヨシノはどうやって会話を成立させているのだろう
彼女は身振りを交えつつ
絶え間なくしゃべりつづけ
時どきシャンパンを口にしたり
相手の返答に耳を傾けたりしている
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