第二章 舞踏会のシンデレラ

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なるほどアツシと呼び捨てにする ぐらいだから笹山オーナーが経営する このリゾートと彼女はかなり 深く関わりがあるみたいだ そして先ほどの笹山オーナーの 脅しはトオルに理性のブレーキを 上手くかけさせていた 世間知らずで楽観的で語学が堪能な ヨシノはここの地域に深く根付き 多くの人に守られているらしい 「あら?あれは何? 稲垣夫人が呼んでいるわ 」 シャンパンを飲んでいるせいか 楽しそうにはしゃぐヨシノが おもしろかった   夫人もそうなのだろうすっかり楽しい 彼女の話術に見せられ 今は自分の知人を次から次へと ヨシノに紹介している トオルはそんなヨシノを遠目に ため息をつきながら見つめていた 彼女にはハラハラさせられっぱなしで 落ち着かなく保護者のような気分に させられる こんな感情的になったのは いつ以来だろう   トオルは信じられない気持ちで小さく 首を振った 「彼女 今夜の主役ね」 気が付くとグー・チェン・チョウが 隣にいて驚いた トオルの肩ぐらいの小柄な男は 派手な刺繍のチャイニーズ服を身にまとい 髪を橇り上げキョンシーのような帽子を かぶっている 今更ながらこの小柄な男が 全中国の裏の世界を牛耳っているなんて 誰が聞いても信じられないだろう しかしそれは歴然とした事実でもある
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