第三章 愛しい人よGood Night

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「ごめん?何の話?」 「彼はあなたが出て行ったのを知らないって?」 「今ではもう知っているでしょうね・・」 「さよならも言わないなんて きっと気分を害しているわよ 」 ヨシノはぐるりと目を回した 「それはない! 感情的な関わり合いはお断りって 人だったから 実際に見たのよ女優をバッサリ切り捨てる所! 彼ほっぺたを叩かれても びくともしなかったのよ! 」 みゆきが息をのんだ 楽しそうに目がいきいきしている 「まぁ!修羅場ね!」 「きっと今頃は私と縁が切れてホッと しているはずよ 私と考え方も住む世界も違いすぎるわ」 それで自分は一向に構わないはずだ 一夜かぎりのシンデレラになれたのだし 彼はまた新しい誰かを探すだろうし 私はいつも通りにこのカフェで 仲間と楽しく過ごすだけ・・・・ それでも・・・・・ ヨシノは爪を噛んだ 初めて会った時 彼は下着姿でバスルームにいるヨシノ自身も 信じられない事情をあっさり信じてくれた そして彼はとても良い話し相手だった ヨシノの話を真剣に聞き受け答えを する彼の言葉に思いやりを感じた 今まで自分の体つきやうわべだけで 寄ってくる男とは違い・・・・ 彼にはいつも誠実がつきまとっていた・・・ すさまじい毒舌だったけど 彼は自分の人生観を体裁よく見せず 嘘もつかなかった ジャーナリストの藤井幸平のような嘘つきに騙された後ではトオルのような表裏の 無い男性と一晩でも過ごしたことが ヨシノには大きな救いになっていた
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