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須王の視線が一瞬孝弘の顔を見詰めたまま止まり、その後須王はコテッと首を傾げた。
「別に気持ち悪くはねぇな。お前ならアリな気もするし」
「え、う、うそ!?」
(アリって言った!アリって!!)
「嘘じゃねーよ。それよりでしゃばって悪かったな。余計なお世話だったら悪ぃ」
孝弘は須王の言葉を聞いて、両手を胸の前で大きく振って、それは違うとアピールする。
「全然っ!俺、すげー嬉しかったっ!杵柄君に守られてるみたいで……」
そこまで言って慌てて口元を押さえる。これでは自分が須王に気があるとバレバレではないか。
(勝手に盛り上がってるけど、多分俺の独り善がりだ。……ちょっと頭冷やした方がいいかも)
昂る気持ちを霧散させたくて孝弘は立ち上がった。
「ごめん俺……。飲み物取ってくるね!」
にっこり笑ったつもりだったが、苦笑い全開だろう。うまく笑えている自信がない。こうして大体失敗するのが孝弘の恋だった。
(気のない振りして警戒されないように。友達から始めなくちゃ)
慎重にしなくてはと気持ちをを切り替えたその時、ぱしっと手首を掴まれた。
「待った」
「え?」
「だから……気持ち悪くねえって。むしろ俺の方が……。本当はケンカとか争い事とか、嫌いなんだよ」
「……じゃあ何で助けてくれたの?」
「わかんねぇ……。それが何でなのか知りたい」
須王の視線は真っ直ぐで、孝弘の心を射抜くようにハートの矢となって突き刺さる。
孝弘の理性はぐらぐらと揺れて崩壊寸前だ。
「あの……もし……、もし、嫌じゃなかったら……俺と試してみる?ぶっちゃけ杵柄君俺のタイプだし、色々親切にしてもらったからサービスするよ?……なんて」
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