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「そんなにそいつイケメンなのかよ……」
紺は三織をじとっと眺める。それに気付いた三織はにっこり笑い、
「俺はこんちゃんが誰よりカッコいいと思ってるよ」
というと、紺は下唇を軽くかんでふいっとそっぽを向く。孝弘も三織もそんな紺の性格をよく知っていた。紺は照れているのだ。
「あーはいはい、幸せのお裾分けとかいらねーから。つーかお前ら爆発しろ!」
「あはは!爆発しろだってー」
孝弘しか知らない事実だが、紺と三織は付き合っている。その事実に全く抵抗感のない孝弘も同類だった。恋愛対象が同じ傾向にある者同士、類は友を呼び今に至る。
「その杵柄……君のクラス知ってる?」
「確かD……だったような?」
「進学組じゃん!頭いいのかあいつ!頭も良くてカッコいいなんて、マジ神様って不公平!!」
「お前だって飛び抜けてるとこあるだろ。猿並みの運動神経とか」
「猿って言うな、猿って!……ちょっとD組覗いてくる」
孝弘はタンッと机に両手をついて立ち上がるとすぐに教室を出て行った。
「すげー行動力だな、白谷は」
「うん。これは……しちゃったんじゃない?」
「ん?」
「恋」
孝弘が去った教室でこんな会話がなされているとも思わずに。
***************
「杵柄ー。呼んでるよ、A組の白谷だって」
「ん?」
そんな知り合いいねーしと、須王は訝しげに教室の入り口へと目をやった。
すると明るい茶髪を外跳ねにし、前髪をサイドに流してピンで可愛らしく留めた小柄な男、孝弘が立っていた。
(あ、あいつ)
須王はすぐに思い出した。つい先刻のことだ。忘れようがない。
目が合うと孝弘は須王に向かって大きく手を振りリスみたいな丸い目をパッと輝かせた。
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