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(杵柄君が俺の為に熊田に電話してくれてる!!)
予想のつかない展開に孝弘は動揺していた。元々孝弘は性の対象が男で且つ面食いだった。理想が高いからか、今までまともな恋愛をしたことがない。だけど今、隣にいる杵柄須王は孝弘の理想そのものだった。
がっしりとして適度に筋肉のついた身体は自分にはないものだし、男らしい顔つきも孝弘の憧れだ。
(どうしよう……杵柄君を落としたい……)
孝弘が抱いていた淡い恋心はいつしかムクムクと膨れ上がり、確固たるものになった。
熊田は孝弘からの連絡を待っていたのかすぐに出たようだった。須王が話始める。
「もしもし、俺、白谷の恋人の杵柄と言いますが……」
孝弘は隣で目を丸くして須王を凝視している。
(なんでそんな設定!?でも……嬉しい。マジで好きだ……)
その目は次第にうっとりと、恋する乙女のように変わる。須王はそんな孝弘の横ですぅっと息を大きく吸い込み一息に言い放った。
「てめーのチンコなんか誰が握らせるか、この豚野郎!!てめーなんかにこいつは渡さねー!!」
携帯から熊田のがなり立てる声が漏れる。けれど、何も聞こえなかったかのように、須王は通話を終了させた。
「おし。これで当分あいつのターゲットは俺になるだろ。ほら」
「……」
須王が孝弘へ携帯を手渡した。受け取った孝弘の手は僅かに震えていた。
「ありがとう……でもどうしてここまでしてくれんの?俺、ホモだし、気持ち……悪くねぇ?大体みんな引くんだよね」
震える手を携帯ごと握りしめて、少しでも可能性があるのなら……とすがるように須王を見つめた。
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