俺にとっては可憐な花

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湯を張った風呂場に奏を押し込む。タオルと着替えを出してやり、母親が作りおきしてくれた味噌汁と豚のしょうが焼きを温める。テーブルに一頻り並べ終え、テレビを見ながら奏が上がるのを待った。暫くして奏が脱衣場から出てきた。 「温まってきたかー?……っ」 紺は奏の姿を見て言葉をなくした。 いつもと全然違う奏の姿がそこにあったからだ。後ろに撫で付けていた前髪は前に下ろされ頬はピンクに染まり、目元は緊張が解けたのか、とろんと和らいでいた。紺のスウェットは大分ぶかぶかで、トレーナーの下からはすらりとした白い脚が伸びている。 「……ズ、ボンはどうした」 「ぶかぶかで、紐縛ってみたけど無理だった。パンツ見えてるわけじゃねーし、もうこれでいい」 そう言いながら奏は紺にズボンを手渡した。それを受け取り、紺と奏は食卓についた。 「取り敢えず飯食って、話しはそれからだ」 「……うん、ごめん」 「べっ、別に謝んなくても……いいけどよ」 奏が素直に頷き謝る。その態度に驚く。可愛らしい見た目だけでなく、本当は中身も素直で可愛らしいのだろう。紺はその事実を感じ取り、何故かどぎまぎしてしまった。奏は小さな声で頂きますと言って、ご飯を食べ始めた。そしてまた小さな声でおいしいと言った。 食事を終え、奏が眠そうに目を擦るので、紺は自室に奏を案内した。奏を自分のベッドへ寝かせる。自分は居間のソファーでいいかと部屋を出ようとしたらぐっとTシャツの裾を引っ張られた。 「ここで……」 「……え?」 「だから、ここで……一緒に寝てほしい」 意味を理解して急に心臓がばくばくと音を立てた。寝るというのは、添い寝という意味だろう。そうはわかっちゃいるが、それでも心臓は鳴り止まない。
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