俺にとっては可憐な花

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下半身を剥き出しにされた奏の上でだらしなくズボンを膝まで下ろした男が腰を打ち付けている。その後ろで仲間が倒れたというのに腰を振るのに夢中で気付いていないようだ。 「ひっ、あぁっ、ぁ……」 奏がか細い声を上げる。奏はぎゅっと目を瞑りひたすら耐えているように見えた。 驚きに声が出なかったのも束の間、沸々と怒りが沸き上がり拳がぶるぶると震え出す。紺の目に激しい憤怒の火が灯った。 手近にあったパイプ椅子を片手に奏に跨がる男の後頭部目掛けて思い切り振り下ろす。 「……っ!!」 ゴンと鈍い音がして、男は横に弾き飛んだ。それを見た仲間2人は「うわぁぁ」と怯えた声を上げ、蜘蛛の子を散らすように逃げていく。椅子で殴られた男は、後頭部に手を当てて、べっとりと付いた自分の血液を見て悲鳴を上げた。だが紺の怒りは収まらない。もう一発お見舞いしてやろうと椅子を再び振り上げた時、足元にしがみつく奏に気付き動きを止めた。 「……っ?」 「ダメだっ、お前はこんなことするなっ!……お願いだから、その椅子下ろして」 (こんな目にあったのに……こいつは俺のことを心配して……?) 奏が懇願する。奏の悲痛な叫びは紺を守ろうとしているものだとわかり、その気持ちを汲み取ろうと持っていた椅子を放り投げた。 「ひっ、こ、この、人殺しっ!」 「あぁ?ちょっと頭切れたくれぇで騒ぐな!!」 (誰が逃がすか) 紺は尻餅をつきながら後ろへ後退る男へ歩み寄る。そして胸ぐらを掴んで揺さぶりながら問い質した。 「おい、何でこんなことしたんだよ」 「ひっ……奏をマワせって携帯に……」 奏に顔を向けると、奏は脱がされたであろう学ランで下肢を隠して、「うん」と頷いた。
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