俺にとっては可憐な花

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「あ?小心者のSだと?舐めた口聞いてんじゃねーぞ、このチビが」 「チビだ?誰のこと言ってんだコラ」 紺の仲間が挑発に乗り一歩踏み出し、対してチビと言われた奏の仲間も奏を守るように前へ出る。 「待てよ。テメーが俺にぶつかったんだろ。テメーでケリつけろよ」 乱闘騒ぎになるとまずい。Sの杵柄は無駄な争いを嫌っているからだ。紺はずいっと仲間の更に前へ出て奏に呼び掛ける。これは自分と奏の問題だ。当人同士でカタをつければ大事にならずに済むと紺は思った。 「それとも怖くてタイマン張れねーか」 紺の言葉にピクリと奏が反応した。 「怖くてタイマン張れねーかだと……?くそ、お前ら下がれっ」 一対一でやり合う気になったのか、奏がむすっとした顔前へ出る。しかし奏の腕を仲間の一人が引っ張った。 「待てよ、奏ちゃん」 「そうだよ、奏ちゃんに何かあったら、俺ら森岡さんに殺されるかもしんねーし……」 「何ごちゃごちゃ言ってんだ」 どうやら奏を表に立たせたくなくて、奏のタイマンを阻止しようとしているのがわかった。だが奏は紺の挑発に乗せられて俄然やる気になっている。腕を掴む仲間の脛をガンッと蹴飛ばし拳を握り、助走をつけて紺を殴りに行った。 「か、奏ちゃんっ!」 「うるせーっ!行くぞ、っらぁぁっっ!!……ひゃぁっ!」 勢い良く飛び出したはいいが最初の一手を紺に難なく避けられ、それどころか胸ぐらを捕まれて引き寄せられた。 「おいどうした、終わりか」 「ぅ……んっ……苦し……っ、離し……て……」 紺がぐぐっと胸ぐらを掴み上げると奏の体が宙に浮いた。紺は右の拳を振り上げる。それを見た奏は咄嗟にぎゅっと目を瞑った。
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